・更年期に太りやすくなるのは、女性ホルモンの変化が、体の状態を変えてしまうからです。
・閉経前後にエストロゲンが低下すると、お腹まわりに脂肪がつきやすくなります。
・加齢や活動量の低下とともに筋肉量も減り、食事量が変わらなくても体重が増えやすくなります。
・極端な食事制限は、筋肉量の低下とリバウンドにつながります。
・体重だけでなく、血糖・脂質・肝機能も合わせて確認することが必要です。
「食べる量は増えていないのに、体重がじわじわ増える」
「若いころと同じように食事を減らしても、なかなか戻らない」
「お腹まわりだけ急に変わった気がする」
このような実感を持つ方が、更年期前後には少なくありません。
ダイエットの意識は持っている。間食も以前より減らしている。それでも体重計の数字が下がらない。
自分の意志が弱いのかと感じてしまうこともあるかもしれませんが、そうとは限りません。
更年期に太りやすくなる背景には、女性ホルモンの低下だけでなく、筋肉量の低下、睡眠の乱れ、活動量の変化、ストレスなどが重なります。
ただし、更年期だから痩せられないわけではありません。
体の変化に合わせて、食事・運動・睡眠・検査の見方を変えていけば、体重管理は続けられます。
この記事では、更年期に体重が増えやすくなる理由を一つひとつ説明します。
「食べていないのに太る」という実感に、医学的な説明をつけることで、何から手をつければよいかが見えてくるはずです。
更年期に太りやすくなるのは、意志が弱いからではありません
更年期前後に体重が増えた方のなかには、「食べすぎているわけでもないのに」「以前と同じ生活をしているつもりなのに」と感じる方が多くいます。これは、気のせいでも努力不足でもなく、体の条件が変わっている状態です。
更年期では、女性ホルモン(主にエストロゲン)が大きく低下します。それに加えて、加齢による筋肉量の低下、睡眠の乱れ、活動量の変化、日々のストレスが重なります。体が消費するエネルギーの量が下がり、同時に脂肪のつき方も変わるため、「以前と同じ生活なのに太る」という状態が起きやすくなります。
更年期の体重増加は、単なる食べすぎだけでは説明できません。一方で、更年期だから痩せられないわけでもありません。
だから、更年期のダイエットでは「食事だけ減らす」「運動だけ頑張る」ではうまくいかないのです。体重が増えた理由を一つに決めつけず、食事・筋肉・睡眠・検査値を一緒に見ていく必要があります。
更年期と体重変化の全体像については、更年期とダイエットの全体像もあわせてご覧ください。
女性ホルモンが減ると、脂肪のつき方が変わります
エストロゲンの低下とお腹まわりの脂肪
女性ホルモンの代表格のひとつがエストロゲンです。エストロゲンは、子宮や卵巣の働きだけでなく、脂肪の分布、血管の保護、骨の維持など、全身にわたる役割を持っています。
閉経前後には、このエストロゲンが大きく低下します。閉経とは、月経が12か月以上ない状態で確認されるもので、日本人女性では平均的に50歳前後に起こります。
ただし、閉経の前後5年ほどをかけて、ホルモンのバランスは徐々に変化していきます。
エストロゲンが低下すると、脂肪のつき方が変わります。若い時期には、お尻や太ももなど下半身に脂肪がつきやすい傾向がありますが、更年期以降はお腹まわりに脂肪がつきやすくなる方がいます。
これは脂肪の「分布」が変わる現象で、すべての人に同じように起きるわけではありませんが、「急にお腹まわりが変わった」という実感は、この変化と関係しています。
「洋ナシ型」から「リンゴ型」に近づく人もいます
脂肪の分布が変わることを、「洋ナシ型からリンゴ型に近づく」と表現することがあります。腰やお尻に脂肪がつきやすかった体型が、お腹まわり中心に変わった、と感じる方がいる、という意味です。
ここで注意したいのは、お腹まわりにつく脂肪には内臓脂肪が含まれることです。内臓脂肪は、皮下脂肪とは異なり、見た目だけの問題ではありません。内臓脂肪が増えると、血糖や脂質、血圧に影響しやすくなり、生活習慣病のリスクと関係します。
「洋服のウエストがきつくなった」という変化を、単に美容の悩みとして片付けず、健康面の変化のサインとして受けとめることが必要です。
LDLコレステロールや中性脂肪も確認しましょう
更年期以降は、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)や中性脂肪が上がりやすくなります。エストロゲンには血管を保護する働きがあるため、その低下が脂質代謝に影響すると考えられています。
閉経前後は、脂質異常症や骨粗しょう症にも注意が必要な時期です。健診で脂質や血糖を指摘されたら、放置してはいけません。
筋肉量が落ちると、同じ食事でも体重が増えやすくなります
基礎代謝は年齢とともに下がります
基礎代謝とは、何もしていない状態でも消費するエネルギーのことです。体を動かしていなくても、心臓を動かす、体温を保つ、内臓を機能させるといった活動にエネルギーが使われています。
この基礎代謝の大きな決定要因のひとつが、筋肉量です。筋肉は、脂肪よりもエネルギーを多く消費する組織です。加齢とともに筋肉量は減りやすくなるため、同じ食事量でも、若いころより消費エネルギーが下がります。
食事量が大きく変わっていなくても体重が増えやすくなる、という現象の背景には、この基礎代謝の低下があります。
更年期そのものが直接の原因というよりも、加齢・活動量の低下・筋肉量の減少が重なった結果として、体重管理が難しくなります。
食事制限だけでは筋肉まで落ちます
体重を急いで落とそうとして、食事量を大幅に減らす方法をとると、体は筋肉を分解してエネルギーに変えようとします。その結果、体重は落ちても筋肉量まで低下してしまいます。
極端な食事制限は、筋肉量の低下につながります。筋肉量が落ちると、基礎代謝がさらに下がり、リバウンドしやすくなります。体重だけを追いかけるダイエットは避けてください。
更年期以降に体重を管理するうえでは、「どれだけ体重を落としたか」だけでなく、「筋肉量をどれだけ保てたか」という視点が必要です。
たんぱく質と軽い筋トレを組み合わせる
筋肉量を落としすぎないために、食事ではたんぱく質を意識して摂ることが役立ちます。肉、魚、卵、大豆製品などを食事の中に意識的に入れることで、食事制限中でも筋肉の材料を補いやすくなります。
運動については、ウォーキングなどの有酸素運動に加えて、スクワットや椅子からの立ち上がりといった、日常生活の中でできる筋力維持の動きを無理なく続けることを基本にします。
「激しい運動をしなければ意味がない」ということはなく、継続できる範囲から始めることが現実的です。
筋肉量の維持とリバウンドの関係については、筋肉量とリバウンド予防の考え方もあわせてご覧ください。
睡眠の乱れやストレスも、食欲と体重に影響します
ほてりや発汗で眠りが浅くなる
更年期には、ほてり(ホットフラッシュ)、発汗、動悸、不眠、気分の落ち込みなど、さまざまな症状が出ます。これらは自律神経の乱れによるものが多く、夜間のほてりや寝汗で目が覚める、眠りが浅くなるといった状態が続く方も少なくありません。
「最近、夜中に何度も起きてしまう」
「朝起きても疲れが取れた感じがしない」
このような睡眠の質の低下は、体重管理に直接影響します。
睡眠不足は間食や夜食を増やす一因になります
睡眠不足は食欲と活動量に影響します。眠れない夜に食欲が増す背景には、食欲を調節するホルモンのバランスが乱れることがあります。空腹感を高めるホルモンが増え、満腹感を伝えるホルモンが働きにくくなるため、夜に甘いものや炭水化物が欲しくなりやすくなります。
「ダイエット中のはずなのに、夜中につい食べてしまう」というのは、意志が弱いからではなく、睡眠不足による食欲の変化として起きることがあります。
ただし、睡眠を整えれば自然に痩せる、ということではありません。睡眠は体重管理の土台の一つであり、食事や運動と組み合わせて考える必要があります。
疲れて動けない日が増えると、消費量も減ります
更年期の不眠や気分の落ち込みが続くと、日中の活動量が落ちます。疲れているから座って休む時間が増える、以前は歩いていた距離を車で移動するようになる、運動の意欲が出ない、こうした変化の積み重ねが消費エネルギーを下げます。
日中の強い眠気やいびきが気になる場合は、睡眠時無呼吸症候群の確認が必要です。睡眠時無呼吸症候群は体重増加とも関係することが知られており、治療によって睡眠の質が改善すると、日中の活動量や体調が変わることがあります。
更年期のダイエットで避けたいのは、極端な食事制限です
体重だけを急いで落とすと、筋肉も落ちます
先に述べたように、更年期以降は筋肉量を落とさないことが、長期的な体重管理に直結します。「とにかく早く痩せたい」という気持ちから、1日の食事を大幅に減らしたり、特定の栄養素を完全にカットしたりする方法は、短期間で体重が落ちても、筋肉まで落ちるリスクがあります。
極端な食事制限は、筋肉量の低下につながります。筋肉が落ちれば基礎代謝が下がり、食事を元に戻したときにリバウンドしやすくなります。
たんぱく質不足、鉄不足、骨粗しょう症にも注意
食事制限中に起きやすい問題として、たんぱく質不足と鉄不足があります。たんぱく質が不足すると筋肉が落ちやすくなり、鉄不足は疲労感や動悸につながり、活動量をさらに下げます。
更年期以降は骨密度の低下(骨粗しょう症)にも注意が必要な時期です。カルシウムやビタミンDが不足しやすくなるため、食事制限の影響を骨にも及ぼさないよう、栄養バランスを保つ視点が必要です。
薬を使う場合も、診察と採血が必要です
体重管理の選択肢として、GLP-1/GIP受容体作動薬(マンジャロなど)やGLP-1受容体作動薬(リベルサスなど)が挙げられます。「更年期太りに効く薬」というわけではなく、体重、BMI、既往歴、現在の内服薬、採血結果、体調を確認したうえで、使用を判断する薬剤です。
副作用として吐き気、下痢、便秘などの消化器症状が出る方がいます。また、すい臓や胆のうに既往がある場合など、使用に注意が必要な方もいます。マンジャロやリベルサスを自己判断で購入・使用してはいけません。副作用が出たときに、自己判断で我慢して続けてはいけません。
薬を使う場合は、診察と体調確認が必要です。薬は体重管理の一つの手段であり、食事・運動・睡眠の見直しと組み合わせて進めるものです。
マンジャロについてはマンジャロの効果と注意点について、リベルサスについてはリベルサスについて詳しく見るで解説しています。
ホルモン補充療法(HRT)については、更年期症状(ほてり、発汗、不眠など)に対する治療の選択肢です。ホルモン補充療法をダイエット目的で自己判断してはいけません。更年期症状が強い場合は、婦人科や更年期外来に相談してください。
体重が増えたときに、医療機関で確認したいこと
血糖、脂質、肝機能、腎機能
更年期の体重増加は、「美容の悩み」だけでなく、生活習慣病リスクのサインとして見ることが必要です。内臓脂肪が増えると、血糖や脂質が上がりやすくなります。これらは自覚症状がないまま進むことが多いため、採血で確認する必要があります。
健診で血糖、脂質、肝機能を指摘されたら、放置してはいけません。
また、体重増加や疲労感をすべて更年期のせいにしないことも重要です。甲状腺機能低下症や貧血があると、体重増加やむくみ、倦怠感が起きます。症状が強い場合や短期間で体重が大きく変わった場合は、これらの確認も必要です。
甲状腺機能や貧血が隠れている場合もあります
甲状腺機能低下症は、疲れやすい、体重が増える、むくみやすい、寒がりになるといった症状を引き起こします。これらは更年期の症状とよく似ているため、「更年期だから」と見過ごされることがあります。気になる症状がある場合は、採血で確認することをお勧めします。
また、食事制限中は鉄不足による貧血が起きやすくなります。貧血があると疲れやすくなり、運動や活動量が落ちるため、体重管理に影響します。
服薬中の薬は勝手にやめてはいけません
一部の薬剤(精神科領域の薬、ステロイド薬など)は、体重増加に影響することがあります。ただし、服薬中の薬を自己判断で中止してはいけません。薬の変更が必要な場合は、処方している医師に相談して判断してください。
短期間で体重が大きく増えた場合は、医療機関で確認してください。
富士市・富士宮市・沼津市周辺で当院のダイエット外来を受診される方は、直近の健診結果や採血データをお持ちいただくと、診察がスムーズです。
採血で確認したい主な項目を以下にまとめます。
| 確認項目 | 見る理由 | 受診時のポイント |
|---|---|---|
| 血糖・HbA1c | 内臓脂肪が増えると血糖が上がりやすくなります。 | 健診で指摘されたら放置しないでください。 |
| LDLコレステロール・中性脂肪 | 更年期以降は脂質が変化しやすくなります。エストロゲン低下が脂質代謝に影響します。 | 自覚症状がなくても確認が必要です。 |
| 肝機能(AST・ALT・γGTP) | 内臓脂肪が増えると脂肪肝のリスクが上がります。 | 数値の変化を経時的に確認します。 |
| 腎機能(eGFR・クレアチニン) | 薬を使う前に腎機能の確認が必要です。 | 既往歴や内服薬と合わせて判断します。 |
| 貧血(血色素量・血清鉄・フェリチン) | 貧血は疲労感や活動量低下につながります。食事制限中は特に起きやすくなります。 | 食事制限中は定期的に確認します。 |
| 甲状腺機能(TSHなど) | 甲状腺機能低下は体重増加・むくみ・倦怠感の原因になります。更年期症状と似た症状が出ます。 | 症状に応じて確認します。初回に行う場合もあります。 |
| 現在の内服薬 | 体重に影響する薬があります。薬の種類によっては、体重増加が副作用として現れます。 | 薬を自己判断で中止してはいけません。処方医に相談してください。 |
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富士市・富士宮市・沼津市周辺で更年期の体重増加に悩む方へ
体重だけでなく、体調と検査値を見ながら進める
更年期前後の体重管理は、「体重を落とすこと」だけをゴールにしないほうが長続きします。体重が落ちても筋肉まで落ちていれば、リバウンドリスクが高まります。血糖や脂質の改善が伴わなければ、健康面のリスクも残ります。
当院のダイエット外来では、体重だけでなく体調・採血データ・生活習慣を確認しながら、医師が関与する形で体重管理を進めています。薬剤(マンジャロ・リベルサスなど)を使う場合も、診察と採血を行ったうえで判断します。「体調を崩さない体重管理」を基本の立場としています。
婦人科とダイエット外来は、悩みによって使い分ける
更年期に関する相談先として、婦人科(更年期外来)とダイエット外来の違いを迷う方がいます。
ほてり、発汗、不眠、気分の落ち込みなど、更年期症状そのものが強い場合は、婦人科や更年期外来への相談が適しています。ホルモン補充療法の適応は、婦人科での判断が必要です。
一方、体重の増加、食事・運動の見直し、血糖・脂質・肝機能の相談、薬剤を用いた体重管理については、ダイエット外来で扱いやすい内容です。更年期症状が軽くても、体重管理の相談だけで受診することができます。
両方の悩みがある場合は、婦人科とダイエット外来を併用することもできます。どちらに行くべきか迷ってしまう場合でも、まず体重・採血の相談からはじめる選択肢として、ダイエット外来を活用してください。
富士市・富士宮市・沼津市周辺で体重の増加や体調の変化が気になる方は、当院のダイエット外来にご相談ください。
まとめ
更年期に体重が増えやすくなる背景には、エストロゲンの低下による脂肪分布の変化、筋肉量の減少による基礎代謝の低下、睡眠の乱れ、活動量の変化が重なっています。
「食べていないのに太る」という実感は、体の条件が変化していることで説明できます。意志の問題でも、更年期だから諦めるべき変化でもありません。
ただし、更年期の体重管理は、「体重を急いで落とすこと」だけを目標にすると、筋肉量の低下やリバウンドにつながりやすくなります。体重とともに、採血データ(血糖・脂質・肝機能)、筋肉量、生活習慣を合わせて見ながら進めることが、長続きする体重管理につながります。
気になる症状がある場合、健診で異常を指摘された場合は、放置せず医療機関に相談してください。
よくある質問(FAQ)
【参考文献】
- 日本産科婦人科学会・日本女性医学学会「女性医学ガイドライン 更年期以降編」
- 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」
- 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
- 日本骨粗鬆症学会「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」
- 日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン」
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」
- 日本睡眠学会「睡眠障害の対応と治療ガイドライン」
- 日本サルコペニア・フレイル学会「サルコペニア診療ガイドライン2017年版」
- Greendale GA, et al. “The menopause transition and its effect on body composition.” Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism.
- Davis SR, et al. “Understanding weight gain at menopause.” Climacteric. 2012;15(5):419-429.
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- Spiegel K, et al. “Sleep curtailment results in decreased leptin levels, elevated ghrelin levels, and increased hunger and appetite.” Annals of Internal Medicine. 2004;141(11):846-850.
- Leproult R, Van Cauter E. “Role of sleep and sleep loss in hormonal release and metabolism.” Endocrine Development. 2010;17:11-21.

