禁煙すると太る?体重増加の理由とダイエットの進め方

  • 禁煙後に体重が増える人は多いものの、増え方には大きな個人差があります
  • 体重は禁煙後3か月までに増えやすい傾向があります
  • 体重が増えた場合でも、禁煙による健康上の利益は大きいと考えられています
  • 禁煙と体重管理は同時に始められますが、最初から厳しい食事制限は必要ありません
  • 急な体重増加や生活習慣病がある場合は、体重だけでなく血液検査の数値も確認します

禁煙後は体重が増える人もいますが、増え方には大きな個人差があります。平均では最初の3か月に増えやすいため、この時期の間食や飲み物を見直すことが大切です。当院でも、禁煙後に太った、と訴えて受診してくる患者さんがいます。もちろん、禁煙しても太らない人はダイエット外来に来ないので、私の偏見もあるかもしれません。

この記事では、増加量の目安、太りやすくなる理由、禁煙を優先しながら体重を管理する方法を、体重の増え方や健診結果、持病の有無に分けて解説します。

目次

禁煙すると太る?体重が増えやすいのは最初の3か月です

1年後の平均は約4〜5kgでも、増え方には大きな個人差がある

62件の研究をまとめた2012年のメタ解析(複数の研究結果を統合して分析する方法)では、禁煙治療を使用しなかった禁煙継続者の平均体重増加は、1か月後で約1.1kg、3か月後で約2.9kg、6か月後で約4.2kg、1年後で約4.7kgでした。平均値を単純に比べると、1年間の体重増加の約6割が最初の3か月までに起きた計算になります。

4.7kgは平均値です。同じ研究では、1年後に体重が減った人が約16%、5kg未満の増加が約37%、5〜10kgの増加が約34%、10kgを超える増加が約13%と推定されています。禁煙すれば必ず5kgほど太る、という意味ではありません。

この分析は、禁煙を続けられた人の体重変化をみたものです。途中で吸ってしまった人は含まれず、日本人に限った数字でもありません。ご自身の体重を予測する数字ではなく、増えやすい時期の目安として受け取ってください。

体重が増えても、禁煙の利益は大きいと考えられています

体重増加への不安が、禁煙をためらう理由になることがあります。一方、オーストラリアの成人1万6,000人以上を追跡した2021年の研究では、禁煙後に体重が増えた人でも、喫煙を続けた人より死亡リスクが低い結果でした。

観察研究のため、禁煙だけが死亡リスクを下げたと断定はできません。また、喫煙状況や体重、病気の診断には自己申告が含まれます。それでも、体重増加を避けるために喫煙を続けることは勧められません。増えた体重については、禁煙を続けながら対応を考えられます。

太りやすくなるのは食欲と習慣が変わるためです

ニコチンによる食欲への作用がなくなる

ニコチンには、食欲を抑える方向に働く作用があります。エネルギー消費にも影響していると考えられています。禁煙するとこの作用がなくなるため、空腹感が強まったり、食事がおいしく感じられたりします。喫煙中は抑えられていた食欲が、本来の状態に戻ると考えるとわかりやすいでしょう。

一方で、代謝の変化だけでは、禁煙後の増加量は説明しきれません。

味覚・嗅覚の回復だけでなく、間食への置き換えも起こる

食事がおいしく感じられるのは、味覚や嗅覚が回復するためでもあります。体重管理では、これまで喫煙していた時間に何をするかも重要です。

食後、仕事の休憩、飲酒中、ストレスを感じたときなど、喫煙が行動の区切りになっている人は少なくありません。禁煙後は、その代わりに菓子や甘い飲料へ手が伸びやすくなります。意志の弱さではなく、喫煙に代わる行動がまだ決まっていないために起こります。

間食のクセをどう見直すかは、食欲と間食のクセを見直した実例も参考になります。

まず見直したいのは間食と飲み物です

食後・休憩・飲酒時の代替行動を先に決める

禁煙を始める前後に、一日のどの場面で吸っていたかを書き出します。振り返ると、間食が増えやすい場面が見えてきます。そのうえで、場面ごとに代わりの行動を決めておきます。

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

喫煙していた場面 起こりやすい変化 置き換え例
食後 習慣的に吸いたくなり、菓子へ置き換わることがあります 歯磨き、5分ほど歩く
仕事の休憩 手持ちぶさたになり、甘い飲料や軽食に手が伸びやすくなります 水を飲む、席を立つ
飲酒時 吸いたい気持ちが強まりやすく、つまみや飲酒量も増えやすくなります 量と時間を決める、無糖飲料をはさむ
イライラしたとき 口寂しさを甘いものや間食でまぎらわせやすくなります 深呼吸、数分歩く

ガムや飴は口寂しさをやり過ごす助けになりますが、飴は糖分を含むため量を決めておきます。飲酒時は吸いたい気持ちが強まり、つまみや酒の量も増えやすいため、禁煙初期は量と時間を控えめにする方法があります。

甘い飲料と無意識の間食を確認する

菓子だけでなく、加糖コーヒー、ジュース、スポーツドリンク、アルコールもエネルギーを含みます。1週間ほど口にしたものをメモすると、無意識の間食や飲み物が見えてきます。特定の食品を足すより、菓子や加糖飲料が禁煙前より増えていないかを確認するほうが実用的です。

体重は短期の増減ではなく週単位で見る

体重は、朝起きてトイレを済ませたあとなど、同じ条件で週に1〜2回測ると傾向をつかみやすくなります。水分量や食事、排便などの影響で、体重は1日の中でも変動します。毎日測るほうが続く人は毎日でもかまいません。数字を見ることが負担になる場合は、頻度を減らします。

運動は気分転換と体重管理の両方に使う

散歩や軽い運動は、吸いたい気持ちから距離を取る行動にもなります。筋力を保つ運動は、体重管理にも役立ちます。ただし、運動だけで体重増加を相殺できるわけではありません。膝や腰に痛みがある方は、種類や強さを調整する必要があります。

禁煙とダイエットは同時にしてもよい?

最初から大幅な減量を狙う必要はない

禁煙直後は、ニコチンが切れることでイライラや落ち着かなさなどの離脱症状が出やすい時期です。厳しい食事制限まで重ねると、禁煙を続けにくくなることがあります。まずは間食と急激な体重増加を抑えることを目標にします。

禁煙が安定してから、本格的な減量へ移る進め方もあります。ただし、禁煙中は何を食べてもよい、という意味ではありません。体重の推移を見ながら、無理のない範囲で食事の内容を整えます。

禁煙を優先しながら、体重増加への備えを始める

禁煙を優先しながら、間食や体重の記録を同時に始めることはできます。

2021年のCochraneレビュー(世界中の研究を系統的にまとめた報告)では、長期的な体重増加を臨床的に意味のある程度まで抑えられると確かにいえる方法は、確認されませんでした。個別に合わせた支援についても、長期的な効果を示す証拠は限られています。

まずは甘い飲料を無糖の飲み物に替える、喫煙していた時間に数分歩くなど、小さな変更から始めます。厳しすぎる食事制限とリバウンドの関係は、無理な食事制限とリバウンドの関係で解説しています。

検査を考えたいケース

糖尿病・脂質異常症・脂肪肝などを一緒に確認する

禁煙後に体重が増えても、原因がすべて禁煙とは限りません。肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症(血液中のコレステロールや中性脂肪が多い状態)、脂肪肝がある方は、体重の推移と検査値をあわせて確認すると、健康状態の変化を把握しやすくなります。

米国の大規模コホート研究では、禁煙後2〜6年の人は、喫煙を続けている人より2型糖尿病の発症リスクが一時的に高く、体重増加が大きいほどその傾向が強いと報告されました。一方、禁煙による死亡リスク低下の利益は保たれていました。

短期間に体重が大きく増えた場合や、むくみ、息切れ、強いだるさがある場合は、禁煙以外の原因も確認します。

血液検査を検討する場面

血液検査は、禁煙した人全員に必要なわけではありません。健診で異常を指摘されておらず、体重の増え方も緩やかなら、生活面の工夫から始める選択もあります。

持病がある方、体重が短期間に大きく増えた方、健診の数値が以前より悪化した方では、血液検査を検討します。血糖、HbA1c(過去1〜2か月程度の血糖状態を反映する指標)、脂質、肝機能、腎機能などを確認し、症状や経過によっては甲状腺機能も調べます。検査結果は、その後の対応を考えるための材料の一つです。

検査項目の見方や、体重の相談で血液検査を行う理由は、ダイエット外来で血液検査を行う理由で説明しています。

マンジャロやリベルサスは「禁煙太りの薬」ではありません

禁煙後の体重増加だけで使用を決めない

マンジャロとリベルサスは禁煙を助ける薬ではなく、日本で承認されている効能・効果は、どちらも2型糖尿病です。これらを肥満や体重管理の目的で使用する場合は、国内で承認された効能・効果とは異なる使用になります。

一方、肥満症に対して承認されている薬もありますが、保険診療で使用する場合は、対象となる患者や医療機関に基準があります。マンジャロやリベルサスの適応外使用とは分けて考える必要があります。

禁煙後に体重が増えたという理由だけで、すぐにこれらの薬の使用を検討するわけではありません。

肥満や血糖の状態を別に評価して判断する

薬を検討する場合は、肥満の程度、血糖、肝機能、腎機能、既往歴、使用中の薬、胃腸症状などを確認し、適応を判断します。吐き気などの消化器症状が出ることもあります。自己判断で使用や増量をせず、中止したい場合も処方医へ相談してください。個人輸入は避けてください。

自由診療で使う場合の位置づけや注意点は、自由診療で使用するダイエット薬の位置づけと注意点にまとめています。

禁煙後の体重が気になるときは、増え方と検査値を整理します

受診前に、禁煙開始日、体重の推移、間食や飲酒の変化、活動量をメモしておくと、診察が進みやすくなります。健診結果があれば、受診時に持参してください。

受診を検討したいケース

  • 短期間に体重が大きく増えた
  • むくみ、息切れ、強いだるさがある
  • 健診で血糖、脂質、肝機能などの異常を指摘された
  • 糖尿病、高血圧、脂質異常症などで治療中である
  • 体重への不安が禁煙の妨げになっている

禁煙治療そのものは、禁煙外来やかかりつけ医へ相談する方法があります。禁煙外来では、条件を満たせば健康保険で治療を受けられます。当院では、禁煙後の体重増加や、血糖・脂質といった代謝の変化についてご相談いただけます。

富士市、富士宮市、沼津市周辺で、禁煙後の体重増加や血糖・脂質の変化が気になる方は、健診結果を持参してご相談ください。受診後も生活面の調整が体重管理の基本で、状況によっては生活面の工夫だけで様子を見ることもあります。相談時に確認する内容は、初診で確認する内容や血液検査についてで紹介しています。

ダイエット外来全体の考え方は、当院のダイエット外来の診療方針をご覧ください。

まとめ

禁煙後は最初の3か月に体重が増えやすいものの、増え方には大きな個人差があります。禁煙を優先しながら、喫煙していた時間を菓子や甘い飲料で置き換えない工夫を始めましょう。短期間に体重が大きく増えた場合や持病がある場合は、検査値も含めて確認します。研究では、禁煙後に体重が増えた人でも、喫煙を続けた人より死亡リスクが低い結果が示されています。

禁煙もダイエットも両方とも成功させて、楽しい人生を送るお手伝いをしていきたいです。

よくある質問(FAQ)

禁煙すると平均で何kgくらい太りますか?

禁煙を1年続けた人の平均は約4〜5kgですが、個人差があります。メタ解析では、体重が減った人が約16%いる一方、10kgを超えて増えた人も約13%と推定されています。

禁煙後の体重増加はいつまで続きますか?

平均では禁煙後3か月までに増えやすく、その後は増加のペースが緩やかになります。半年以上増え続けている場合は、間食、飲酒、活動量や検査値を見直す余地があります。

禁煙とダイエットを同時に始めてもよいですか?

同時に始められますが、禁煙を優先します。禁煙直後は厳しい食事制限をせず、甘い飲料を無糖に替える、間食を記録する、歩く時間を少し増やすといった調整から始めましょう。

太るのが怖いので、禁煙を後回しにしてもよいでしょうか?

体重増加を避けるために禁煙を先送りすることは勧められません。加熱式たばこへの切り替えも禁煙とはいえません。電子タバコにはニコチンを含む製品と含まない製品がありますが、体重増加を避ける方法としての使用は勧められません。

体重への不安が禁煙の妨げになっている場合は、禁煙外来やかかりつけ医に相談できます。

禁煙後に太ったら、マンジャロやリベルサスを使えますか?

マンジャロとリベルサスは、禁煙後の体重増加を治療する薬ではありません。国内で承認されている効能・効果は2型糖尿病であり、体重管理目的の使用は適応外です。肥満症に対して承認されている薬もありますが、保険診療で使用する場合は対象となる患者や医療機関に基準があります。

薬を検討する場合は、肥満の程度、血糖、肝機能、腎機能、既往歴、使用中の薬などを確認し、医師が適応を判断します。

【参考文献】
  1. Aubin H-J, et al. Weight gain in smokers after quitting cigarettes: meta-analysis. BMJ. 2012;345:e4439.(禁煙後12か月までの体重変化をまとめたメタ解析。62件の研究が対象)
    PubMedで確認する
  2. Hartmann-Boyce J, et al. Interventions for preventing weight gain after smoking cessation. Cochrane Database Syst Rev. 2021;10:CD006219.(システマティックレビュー)
    PubMedで確認する
  3. Sahle BW, et al. Weight Gain After Smoking Cessation and Risk of Major Chronic Diseases and Mortality. JAMA Netw Open. 2021;4:e217044.(オーストラリア成人16,663人を2006〜2014年に追跡した観察コホート研究)
    論文を確認する
  4. Hu Y, et al. Smoking Cessation, Weight Change, Type 2 Diabetes, and Mortality. N Engl J Med. 2018;379:623-632.(米国の大規模コホート研究。観察研究)
    PubMedで確認する
  5. Audrain-McGovern J, Benowitz NL. Cigarette smoking, nicotine, and body weight. Clin Pharmacol Ther. 2011;90:164-168.(ニコチン、食欲、エネルギー消費と体重の関係を扱ったレビュー)
    論文を確認する

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