- 日本のマンジャロ添付文書では、脱毛は主な副作用として記載されていません
- 一方で、海外の臨床試験ではチルゼパチド使用中の抜け毛が報告されており、「完全に無関係」とは言えません
- 急激な体重減少や食事量の低下により、「休止期脱毛症」が起こることがあります
- 抜け毛が気になる場合は、減量速度・食事量・栄養状態・貧血・甲状腺機能なども合わせて確認します
- 自己判断でマンジャロを中止せず、気になる症状は処方医に相談してください
診療中、マンジャロを使用している女性の患者さんから、こんな言葉をいただいたことがあります。
「マンジャロでハゲると聞いて不安になりました。周りにも同じことを言っている人がいます」
医師としてまず確認したのは、日本のマンジャロ電子添付文書です。現時点の添付文書では、脱毛は主な副作用として記載されていません。当院でも、これまでの診療でマンジャロそのものが原因と明確に考えられる抜け毛を経験してきたわけではありません。
それでも、患者さんが不安を感じているなら、医療者側もきちんと整理しておく必要があります。改めて確認すると、米国で体重管理薬として承認されているZepboundの添付文書では、抜け毛は体重減少と関連して報告されています。臨床試験の統合解析では、Zepbound使用者のうち女性で7.1%、男性で0.5%に抜け毛が報告されています。一方、プラセボ群でも女性1.3%、男性0%に報告されています。また、急激な体重減少や食事量の低下によって「休止期脱毛症」が起こることもあります。
「マンジャロでハゲる」という言い方は少し雑ですが、無視してよい不安でもありません。この記事では、マンジャロと抜け毛の関係について、現時点でわかっていることを一般向けに整理します。
マンジャロで抜け毛が増えることはある?
「マンジャロでハゲる」と不安に感じる人は少なくない
SNSや口コミサイトに「マンジャロを使ったら抜け毛が増えた」という声が見られます。検索エンジンでも「マンジャロ 抜け毛」「マンジャロ 脱毛」といったワードが候補に出てくることから、同じ不安を感じている方が一定数いることがわかります。
不安を感じること自体は自然なことです。ただし、ネット上の体験談には個人差や他の要因が混在していることも多く、「使った人全員がそうなる」という話ではありません。マンジャロそのものの効果や使い方については、マンジャロ(チルゼパチド)で痩せるのか、で詳しく解説しています。
日本の添付文書では、脱毛は主な副作用として目立たない
日本のマンジャロ電子添付文書(作成時点)では、脱毛や抜け毛は主な副作用として記載されていません。頻度の高い副作用として挙げられているのは、悪心・嘔吐・下痢・便秘・食欲低下といった消化器症状が中心です。
ただし、「添付文書に記載がない=絶対に起こらない」という意味ではありません。
日本の添付文書の記載は、作成・改訂時点の情報に基づきます。最新情報は処方医または医薬品情報データベースでご確認ください。
一方で、海外では体重管理中の抜け毛が報告されている
米国で体重管理薬として承認されているZepbound(チルゼパチド)の添付文書では、脱毛(hair loss)が副作用のひとつとして記載されています。SURMOUNT試験と呼ばれる大規模臨床試験でも、チルゼパチド使用者の一部で抜け毛が報告されました。
注目すべきは、この抜け毛が「薬そのものの直接作用」としてではなく、「体重減少と関連している可能性がある」という文脈で説明されている点です。
「薬が直接ハゲさせる」と言うわけではない
現時点では、マンジャロ(チルゼパチド)が毛根を直接傷めることで抜け毛を引き起こすメカニズムは、医学的に確立されていません。
一方で、「マンジャロと抜け毛はまったく無関係」とも言い切れません。薬の使用によって食欲が低下し、食事量が減り、栄養状態が変化することで、間接的に抜け毛に関わる可能性があります。次のセクションでは、その経路を具体的に見ていきます。
なぜマンジャロ使用中に抜け毛が気になるのか
急激な体重減少は髪のサイクルに影響する
髪は「成長期・退行期・休止期」というサイクルを繰り返しています。このサイクルは体の状態と連動しており、急激な体重減少があると体がそれをストレスとして感知します。すると多くの髪が一斉に休止期へ移行し、数か月後にまとめて抜けることがあります。これが次のセクションで説明する「休止期脱毛症」につながる流れです。
食事量の低下でたんぱく質や鉄・亜鉛が不足しやすい
マンジャロには強い食欲抑制効果があります。「食べたいと思わない」「少量しか食べられない」という状態が続くと、カロリーだけでなく髪の成長に必要な栄養素も不足しやすくなります。
特に不足しやすいのがたんぱく質・鉄・亜鉛です。髪はケラチンというたんぱく質から作られており、鉄や亜鉛はその成長をサポートする役割を担っています。「そこまで食べていないとは思っていなかった」という方でも、必要量を下回っているケースがあります。
体への負荷で休止期脱毛症が起こることがある
急激な体重減少・エネルギー不足・栄養不足は、いずれも体への負荷になります。これらが重なると、髪のサイクルが乱れ、休止期脱毛症につながることがあります。
出産後・手術後・高熱が続いた後にも同様の現象が起きることが知られています。「特別な病気」というより、体が大きな変化を経験したときに起きやすい反応のひとつです。
もともとのAGAや女性型脱毛症が目立ってくることもある
マンジャロ使用中に抜け毛が気になりはじめたとしても、原因がマンジャロや体重減少とは別のところにある場合もあります。もともとAGA(男性型脱毛症)や女性型脱毛症の傾向があった方では、体重変化をきっかけにその症状が顕在化することがあります。円形脱毛症は自己免疫が関わる疾患で、体重減少とは独立した原因で起きることが多い疾患です。
抜け毛の全てが「マンジャロが原因」とは限りません。
抜け毛の程度や原因には個人差があります。この記事は一般的な情報の整理であり、個別の症状については担当医にご相談ください。
以下の表に、マンジャロ使用中に抜け毛が気になるときに考えられる主な原因をまとめます。
| 原因 | 起こり方 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 急激な体重減少 | 体へのストレスが髪のサイクルを乱し、休止期脱毛症の誘因になる | 短期間に体重が大きく落ちていないか確認する |
| 食事量の低下 | エネルギー・栄養素の不足が髪の成長に影響する | 1日に食べている量と内容を処方医に伝える |
| たんぱく質不足 | 髪の主成分(ケラチン)の材料が不足する | 肉・魚・卵・大豆製品を毎食取れているか確認する |
| 鉄・亜鉛不足 | 髪の成長をサポートする栄養素が欠乏する | 血液検査(フェリチン含む)で確認できる |
| 休止期脱毛症 | 誘因から2〜4か月後に抜け毛が増える時期が来る | 体重が落ちた時期と抜け毛が増えた時期のずれを確認する |
| AGA・女性型脱毛症 | ホルモン・遺伝的要因が背景にある。徐々に進行する | 皮膚科・毛髪専門外来での診断が必要 |
| 円形脱毛症 | 円形・楕円形に限局した脱毛が起きる | 皮膚科での確認が必要 |
| 甲状腺機能異常・貧血 | 倦怠感・冷え・むくみなど全身症状を伴うことがある | 血液検査で甲状腺機能・貧血の有無を確認できる |
※スマートフォンでは表を横にスクロールしてご覧いただけます。
表は抜け毛の特徴を大まかに整理したものです。自己判断で診断するためのものではありません。
休止期脱毛症とは何か
髪が一斉に休止期へ入り、数か月後に抜け毛として現れる
休止期脱毛症(テロゲン・エフルビウム)とは、何らかのきっかけで多くの髪が一斉に休止期へ移行し、その後まとめて抜けてくる状態です。
通常、健康な状態では成長期の髪が全体の80〜90%を占めています。体に大きなストレスや変化が加わると、このバランスが崩れます。休止期に入った髪は2〜4か月ほどで自然に抜け落ちるため、その時期に「急に抜け毛が増えた」と感じることになります。
原因は薬だけでなく、減量・栄養不足・体調変化でも起こる
休止期脱毛症を引き起こす誘因は薬だけではありません。急激な体重減少、エネルギー不足、たんぱく質・鉄・亜鉛などの栄養不足、手術、高熱、出産、強いストレスなどが誘因として知られています。
マンジャロ使用中に起きる場合、薬そのものの直接作用というより、「食欲低下によって急激に体重が落ちた」という変化がきっかけになっている可能性があります。
多くは一時的だが、原因を確認しておくことが大切
休止期脱毛症は、誘因が解消されると多くの場合は回復に向かうとされています。ただし、鉄欠乏や甲状腺機能低下症など別の原因が重なっているケースでは、その対処も必要になります。
「しばらくすれば戻るだろう」と放置するより、抜け毛が続く・悪化している場合は処方医や皮膚科に相談してください。
体重が落ちた時期と抜け毛が増える時期はずれることがある
休止期脱毛症の特徴のひとつが、「きっかけとなった出来事と、抜け毛が目立つ時期にずれがある」ことです。誘因から2〜4か月後に抜け毛のピークが来ることがあります。
「先月まで順調に体重が落ちていたのに、今頃になって急に抜け毛が増えた」というケースは、このタイムラグで説明できることがあります。体重減少の時期と抜け毛が増える時期が一致しない場合でも、両者が関連している可能性はあります。
以下の表は、薬そのものの影響と体重減少に伴う抜け毛の考え方を整理したものです。実際にはこの2つを完全に切り分けることが難しい場合もありますが、参考にしてください。
| 比較項目 | 薬そのものの影響 | 体重減少に伴う抜け毛 |
|---|---|---|
| 考え方 | 薬の使用時期と抜け毛が増えた時期の関係を確認する | 急激な体重減少や栄養不足との関係を確認する |
| 起こる時期 | 使用開始後に変化が出ることがあるが、時期は一定しない | 体重が大きく落ちた時期から2〜4か月後に増えることがある |
| 背景 | 薬の直接的なメカニズムは現時点では不明 | 休止期脱毛症のメカニズムとして医学的に説明されている |
| 対応 | 処方医への相談・他の原因との鑑別が必要 | 減量ペースや栄養状態の見直しが対応の中心になる |
| 注意点 | 自己判断で中止せず、処方医に相談する | 鉄欠乏・甲状腺疾患など別の原因が重なっていないか確認する |
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抜け毛が気になるときに確認したいこと
体重が短期間で落ちすぎていないか
減量のスピードが速すぎると、体への負荷が大きくなります。マンジャロを使用している場合、食欲が大幅に低下して気づかないうちに減量ペースが速くなっているケースがあります。「どのくらいのペースで体重が落ちているか」を処方医と共有することが、体調管理の基本になります。
食事量が極端に減っていないか
食欲低下によって食事量が著しく減っている場合、エネルギーだけでなく栄養素も不足するリスクが高まります。「食べられているつもり」でも、一日に必要な量に届いていないことがあります。何をどれくらい食べているかを具体的に処方医に伝えると、栄養面の確認につながります。
たんぱく質を十分に取れているか
髪の主成分であるケラチンはたんぱく質から作られています。食事量が減っているときに特に不足しやすいのがたんぱく質です。サプリメントで補うより、まず食事から摂ることが基本です。肉・魚・卵・大豆製品を毎食意識して取り入れることが、髪の状態を保つうえでも役立ちます。
貧血、鉄欠乏、甲状腺機能異常が隠れていないか
抜け毛の原因として見落とされやすいのが、鉄欠乏と甲状腺機能の異常です。鉄欠乏は、貧血の基準に達していなくても貯蔵鉄(フェリチン)が低い段階から髪の成長に影響することがあります。甲状腺機能低下症では、抜け毛のほかに倦怠感・冷え・むくみが現れることがあります。
これらは血液検査で確認できます。「マンジャロの副作用かな」と思っていた症状が、実は別の原因だったというケースも少なくありません。処方医に相談する際に合わせて確認してもらうことができます。
円形脱毛症やAGAではないか
抜け方のパターンによって、疑うべき原因が変わります。円形・楕円形に限局して脱毛している場合は円形脱毛症の可能性があります。頭頂部や生え際から徐々に薄くなる場合はAGAや女性型脱毛症のことがあります。
いずれもマンジャロや体重減少とは独立した原因で起きることが多く、皮膚科での診断が必要です。「抜け毛のパターンが気になる」「特定の場所が薄くなっている」という場合は、皮膚科への受診も検討してください。
マンジャロで抜け毛が増えたら中止すべき?
自己判断で中止する前に医師へ相談する
抜け毛が気になるからといって、自己判断でマンジャロを中止することはお勧めしません。マンジャロは血糖値や体重管理のために処方されており、急に中止すると体調管理上のリスクが生じることがあります。
マンジャロは医師の処方のもとで使用する薬です。副作用が気になる場合も、自己判断で中止せず、必ず処方医に相談してください。
処方医は、抜け毛の症状をもとに、減量ペース・食事量・栄養状態なども含めて総合的に判断します。「こんなことを相談してよいのか」と遠慮せず、気になる変化は正直に伝えてください。
減量速度や食事内容を見直す
抜け毛が気になる場合にまず確認したいのが、減量のペースと食事の内容です。体重が急激に落ちている場合、スピードを緩やかにすることで体への負荷が下がり、休止期脱毛症のリスクが減る可能性があります。
食事量が極端に少ない場合は、適切な量とバランスに戻すことを検討します。「食べると吐き気がする」「まったく食べる気がしない」という場合も、その点を処方医に伝えてください。
必要に応じて減量ペースや使用量を処方医と調整する
マンジャロの用量は、症状や体調に応じて調整することが可能です。抜け毛をはじめとする体調の変化が続く場合、用量の見直しや減量ペースの変更を処方医と相談することができます。「薬を続けながら対処できることがある」という点は、覚えておいてください。医療ダイエット薬を安全に使い続けるための基本については、ダイエット薬はどこで処方してもらうのが良いのか、もあわせてご覧ください。
脱毛が強い場合は皮膚科相談も選択肢になる
処方医への相談に加えて、以下のような症状がある場合は皮膚科への受診も選択肢になります。
- 円形・楕円形に抜ける脱毛がある
- 頭皮に赤み・かゆみ・痛みがある
- 生え際や頭頂部だけが急速に薄くなっている
- 短期間で広い範囲が薄くなっている
皮膚科では、脱毛の種類と原因を診断し、状態に応じた対応が受けられます。
以下の表に、処方医・皮膚科への相談を考えたい抜け毛のサインをまとめます。
| 症状・状況 | 相談先 | 理由 |
|---|---|---|
| 全体的な抜け毛が増えた | 処方医 | 減量ペース・栄養状態・休止期脱毛症の可能性を一緒に確認できる |
| 食事量が大幅に減っている | 処方医 | 栄養不足・減量ペースの見直しが必要な可能性がある |
| 円形・楕円形に抜ける | 皮膚科 | 円形脱毛症の可能性があり、専門的な診断が必要 |
| 頭皮に赤み・かゆみ・痛みがある | 皮膚科 | 頭皮の皮膚疾患を除外する必要がある |
| 生え際や頭頂部だけが目立つ | 皮膚科 | AGA・女性型脱毛症の可能性があり、診断が必要 |
| 疲れやすい・寒がり・むくみがある | 処方医 | 甲状腺機能異常や貧血が隠れている可能性がある |
| 急速に広い範囲が薄くなっている | 処方医+皮膚科 | 複数の原因が重なっている可能性があり、早めの確認が望ましい |
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ダイエット外来で大切なのは「体重だけを落とすこと」ではない
体重減少のスピードと体調を一緒に見る
ダイエット外来の診療では、体重の数字だけでなく、減量のペース・体調の変化・食事の内容・筋肉量なども合わせて確認します。「できるだけ早く痩せること」よりも、「体に無理なく、続けられる形で落とすこと」を基本に置いています。体重が順調に落ちていても、体調が崩れていたり食事量が極端に少なかったりする場合は、ペースを調整します。
髪、筋肉、体力を守りながら減量する
急激な減量は脂肪だけでなく、筋肉量の低下や栄養不足にもつながります。髪のボリューム変化も、体への負荷を示すサインのひとつとして捉えています。
「痩せたいけれど、髪が抜けたり体がだるくなったりするのは嫌だ」という気持ちは、とても自然なものです。外見の変化を我慢してまで体重を落とす必要はありません。
不安な症状を相談できる体制が重要
「こんなことを聞いてもいいのかな」と思うような変化でも、処方医に伝えることで原因の整理につながります。抜け毛に限らず、食欲の変化・体力の低下・気分の変化なども、体調を把握するうえで参考になる情報です。
処方医との間で気になることを話しやすい環境を保つことが、安全な減量を続けるうえで欠かせない要素のひとつです。リバウンドなく体重を維持するための視点については、リバウンドをやっつけろ、も参考にしてください。
まとめ
「マンジャロでハゲる」という情報は広まっていますが、現時点では薬が直接毛根を傷めるというメカニズムは医学的に確立されていません。一方で、急激な体重減少や食事量低下による休止期脱毛症が関与している可能性はあり、「まったく無関係」とも言い切れない状況です。
抜け毛が気になる場合は、自己判断で中止するより、まず処方医に症状を伝えてください。減量のペースや食事の内容を一緒に確認することで、対処できる場合があります。円形の脱毛・頭皮の異常・急速な進行などがある場合は、皮膚科への相談も視野に入れてください。
髪・筋肉・体力・栄養状態を守りながら、無理のないペースで続けていくことが、長く健康を保つことにつながります。
よくある質問(FAQ)
【参考文献】
- 医薬品インタビューフォーム マンジャロ皮下注アテオス(チルゼパチド)日本イーライリリー株式会社
- マンジャロ皮下注アテオス 電子添付文書 日本イーライリリー株式会社
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