男性更年期と生活習慣病の関係|血糖・脂質・血圧が気になり始めた方へ

・40代後半〜60代の男性では、健診で血糖・脂質・血圧を指摘される時期と男性更年期の時期が重なることがあります
・原因は男性ホルモンだけではなく、内臓脂肪の増加、筋肉量の低下、睡眠、飲酒、ストレスが複合的に関係しています
・健診で指摘された段階は、体重や生活習慣を見直す良いタイミングです
・マンジャロやリベルサスを検討する場合は、血糖値・体重・既往歴・現在の薬を確認したうえで医師が判断します。
・富士市・富士宮市・沼津市周辺で体重と検査値をまとめて確認したい方は、健診結果を持って医療機関に相談すると対策しやすいです

目次

男性更年期の時期に、血糖・脂質・血圧が悪くなることはある

40代後半を過ぎたころから、「健診でいくつか引っかかった」「お腹まわりだけが戻らない」という話を聞くことが増えます。疲れやすさ、やる気の低下、筋力の衰えを感じながら、同じタイミングで血糖・脂質・血圧の異常を指摘される。そういう方が、外来でも少なくありません。

この時期は、男性更年期──医学的にはLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)とも呼ばれる状態と重なることがあります。LOH症候群では、加齢に伴うテストステロン(男性ホルモン)の低下が、疲労感、意欲の低下、抑うつ気分、性欲の低下、筋力低下、睡眠障害などの症状に関係すると考えられています。

ただし、血糖・脂質・血圧が悪くなる原因を男性ホルモンだけで説明することはできません。内臓脂肪の増加、筋肉量の低下、睡眠不足、飲酒、ストレス、運動不足が同時に重なっていることが多く、一つの原因だけで説明するより、体重・睡眠・飲酒・運動量を合わせて見る必要があります。

この記事では、男性更年期そのものの診断や治療ではなく、健診で指摘される血糖・脂質・血圧と、体重管理の関係を中心に解説します。男性更年期とダイエットの全体像については、別のページでまとめています。

カギになるのは「内臓脂肪」と「筋肉量の低下」

内臓脂肪が増えると、血糖・脂質・血圧に影響する

男性更年期世代で起こりやすい変化の一つが、お腹まわりへの脂肪の蓄積です。体重が極端に増えていなくても、内臓脂肪だけが着実に増えているケースは珍しくありません。

内臓脂肪が増えると、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が生じやすくなります。これは血糖値の上昇につながるだけでなく、脂質代謝の乱れや、血圧上昇とも関係します。

メタボリックシンドロームは、この内臓脂肪の蓄積を基盤として、血糖・脂質・血圧の異常が重なった状態です。日本では、男性は腹囲85cm以上が内臓脂肪蓄積の目安とされています。ただし、腹囲85cm以上だけでメタボリックシンドロームと診断されるわけではありません。これに加えて、血糖・脂質・血圧のうち2項目以上が基準を満たす場合に診断されます。腹囲はあくまで「確認を始めるきっかけの一つ」として捉えてください。

テストステロンの低下とメタボリックシンドロームには関連が報告されていますが、どちらが先かという因果関係は単純ではありません。内臓脂肪が増えることがテストステロン低下を加速する面もあり、互いに影響し合っている可能性があります。

筋肉が減ると、血糖を処理する力も落ちる

あまり知られていませんが、全身の筋肉は血糖を処理する場所として非常に重要な役割を担っています。食後に血液中に増えたブドウ糖の多くは、筋肉に取り込まれてエネルギーとして使われます。

加齢、運動不足、そしてテストステロン低下が重なると、筋肉量が落ちやすくなります。筋肉が減ると、食後の血糖を処理する力も落ちます。これは体重の変化とは別の問題で、「太っていないから大丈夫」とはならない理由の一つです。

体重だけでなく、腹囲、筋肉量、健診データを合わせて見る必要があります。

体重や内臓脂肪が減ると、血糖・脂質・血圧が改善する人はいます。ただし、薬が必要な状態をダイエットだけで放置してはいけません。

項目 起こりやすい変化 確認したいこと
血糖 内臓脂肪の増加や筋肉量低下で、血糖が上がりやすくなります HbA1c、空腹時血糖、体重、腹囲
脂質 中性脂肪は飲酒や糖質の影響を受けます。LDLは体質や食事内容の影響も受けます LDL、中性脂肪、HDL、飲酒量、食事内容
血圧 体重増加、睡眠不足、飲酒、ストレスが重なると上がりやすくなります 家庭血圧、体重、睡眠の質、塩分、飲酒量
腹囲・体重 内臓脂肪が増えると、血糖・脂質・血圧の全体に影響します 腹囲、BMI、体重の推移

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血糖が高くなる背景|男性更年期世代で見落としやすいこと

HbA1cが少し高い段階で対策を始める

血糖異常の厄介なところは、自覚症状がほとんどないまま進むことです。「疲れやすい」「だるい」という感覚はあっても、それが血糖のせいなのか、更年期のせいなのか、症状だけでは区別できません。

健診で「HbA1cが少し高い」と言われた段階は、放置する段階ではありません。HbA1cは過去1〜2か月の平均的な血糖の状態を反映する指標です。空腹時血糖、随時血糖とあわせて確認することで、今の状態を把握できます。

この段階で食事・運動・体重・睡眠・飲酒を見直すことが、数値の改善につながりやすい。糖尿病の診断が必要な数値であれば、保険診療での評価と治療が必要になります。

疲れやすさを「更年期だけ」と決めつけない

疲れやすい、眠い、集中できないという症状は、男性更年期でも、血糖の問題でも起こります。どちらかに決めつけず、血液検査で現状を確認することが先です。

また、体重増加だけでなく、睡眠時無呼吸や習慣的な飲酒も血糖の悪化に関係します。いびきが強くなった、昼間に強い眠気がある、という場合は睡眠時無呼吸の評価も検討する価値があります。

マンジャロ(チルゼパチド)やリベルサス(セマグルチド経口薬)に関心がある方は、これらがもともと糖尿病治療薬として開発された薬であることを知っておいてください。自由診療として体重管理に用いる場合も、血糖値・体重・既往歴・副作用リスクを確認したうえで医師が判断します。詳しくは、血糖・血圧・脂質の薬と体重への影響についてのページも参考にしてください。

脂質が悪くなる背景|LDLコレステロールと中性脂肪は分けて考える

LDLコレステロールは体重だけで決まらない

健診で「脂質異常」と言われても、LDLコレステロールが高いのか、中性脂肪が高いのか、HDLコレステロールが低いのかによって、対策は変わります。一括りに「コレステロールが高い」と考えない方が良い。

LDLコレステロールは、遺伝や体質の影響を強く受けます。食事内容や体重も関係しますが、体重を落としてもLDLが十分に下がらない人はいます。その場合は薬物治療が必要になります。「まず痩せてから薬を考える」と自己判断して放置しないでください。

中性脂肪は食事・飲酒・内臓脂肪の影響を受けやすい

一方、中性脂肪は生活習慣の影響を受けやすい指標です。糖質の摂りすぎ、アルコール、内臓脂肪の増加、不規則な食事パターンが数値に直接関係します。

男性更年期世代は、仕事の付き合いでの飲酒、外食、夜遅い食事、運動不足が重なりやすい時期でもあります。こうした習慣の見直しで改善を狙える余地があるのが、中性脂肪の特徴です。

脂質異常症の薬を使うことと体重管理に取り組むことは、対立する選択肢ではありません。薬が必要な方は薬を使いながら、体重管理や食事の見直しを並行することで、より安定した管理につながります。薬の種類や体重への影響については、生活習慣病の薬と体重の関係を詳しく見るページを参照してください。

血圧が上がる背景|体重、塩分、睡眠、ストレスが重なる

体重が増えると血圧は上がりやすい

40代・50代の男性で、「健診で初めて血圧を指摘された」というケースは少なくありません。塩分の摂りすぎだけが血圧の原因ではなく、体重増加、飲酒、運動不足、ストレスも大きく影響します。

体重を落とすこと、減塩、運動、節酒は、血圧を下げる生活習慣改善として確立しています。

ただし、血圧が高い状態をダイエットだけで長期間放置してはいけません。高血圧は、脳卒中、心疾患、腎疾患のリスクを高めます。見た目や自覚症状がなくても、数値が高ければ血管には負担がかかっています。

睡眠時無呼吸やストレスも見逃せない

睡眠時無呼吸が血圧を上げることは、研究でも確認されています。夜間に繰り返す低酸素状態が交感神経を刺激し、血圧が下がりにくくなります。「減量しても血圧が思ったより下がらない」という場合は、睡眠時無呼吸の関与を疑う理由の一つになります。

男性更年期の不眠、イライラ、慢性的な疲労感も、血圧管理に悪影響を与える場合があります。

家庭での血圧測定も習慣にしてください。診察室での血圧は高めに出ることがある一方、家庭血圧は日常の状態をより正確に反映します。朝と夜、各2回を目安に測定して記録しておくと、受診時に役立ちます。

繰り返し高い血圧が出る場合は、保険診療での評価と治療を検討してください。体重が減ることで血圧が下がる方はいます。ただし、薬の開始・減量・中止は自己判断ではなく、医師と相談して決めましょう。

男性更年期か、生活習慣病か。どちらか一つに決めつけない

テストステロン検査だけで全体は分からない

「これは男性更年期のせいですか?それとも生活習慣病ですか?」という質問を受けることがあります。答えは、多くの場合どちらか一つではありません。

男性更年期(LOH症候群)の評価には、症状の確認とテストステロン値などの血液検査が関係します。しかし、テストステロンの値だけで体重増加、血糖、脂質、血圧の全体像は分かりません。

男性更年期そのものの診断やテストステロン補充療法は、泌尿器科や男性更年期外来が中心になります。一方で、体重増加や血糖・脂質・血圧の管理は、ダイエット外来でも相談しやすい領域です。「どこに行けばいいか分からない」という場合は、まず体重と健診データを持って相談するところから始めると、次のステップが見えやすくなります。

血液検査で見たい項目

健診結果を持参すると、今すぐ治療が必要な項目と、体重管理で改善を狙える項目を分けて考えられます。

確認しておきたい項目は次のとおりです。

・血糖(空腹時血糖、HbA1c)
・脂質(LDLコレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール)
・肝機能(AST、ALT、γ-GTP)
・腎機能(クレアチニン、eGFR)
・尿酸
・血圧
・体重・腹囲

体重増加がある場合は、脂肪肝や睡眠時無呼吸も考慮します。すでに薬を飲んでいる場合は、薬の内容も含めて確認が必要です。

薬が必要な状態で、ダイエットだけに頼ってはいけません。同様に、薬を飲んでいるからといって体重管理が不要なわけでもありません。症状・体重・腹囲・血液検査・血圧を合わせて見ることで、今どこに立っているのかが見えてきます。

マンジャロ・リベルサスを考える前に確認したいこと

薬は「楽をするため」ではなく、医学的に必要かを見て使う

「健診で引っかかった」「お腹が気になる」という段階でマンジャロやリベルサスに関心を持つ方は増えています。興味を持つこと自体は自然なことですが、「男性更年期太りだから薬で痩せる」という発想では、正しい使い方にはなりません。

マンジャロはチルゼパチドという成分のGIP/GLP-1受容体作動薬、リベルサスはセマグルチドの経口GLP-1受容体作動薬です。いずれも血糖や体重に関係する薬ですが、誰でも使えるものではありません。

使用を検討する場合は、BMI、血糖、HbA1c、肝機能、腎機能、既往歴、現在服用している薬、消化器症状の有無などを確認する必要があります。薬を使うかどうかは、医師が適応とリスクを総合的に判断します。薬を使わずに生活習慣の改善だけで対応できる状態であれば、まずそちらを優先します。

副作用・禁忌・血液検査を飛ばさない

GLP-1系・GIP/GLP-1系の薬で起こりやすい副作用として、悪心(吐き気)、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、食欲低下などの消化器症状があります。多くは投与初期に出やすく、徐々に落ち着くことが多いですが、個人差があります。

膵炎、胆石症・胆のう炎のリスクにも注意が必要です。強い腹痛、嘔吐、脱水症状などが出た場合は、薬の継続を自己判断せず、医療機関に連絡してください。脱水に伴う腎機能悪化にも注意が必要です。

薬を使う場合も、食事・運動・睡眠・飲酒習慣の見直しとセットで進めます。薬だけで体重管理が完結することはありません。

個人輸入での入手、自己判断での用量変更、中止、再開は行ってはいけません。適正な管理なしに使用することで、重大な健康被害が生じるリスクがあります。マンジャロやリベルサスの詳しい内容については、自由診療のダイエット薬の種類と注意点のページでまとめています。

富士市・富士宮市・沼津市周辺で、健診異常と体重増加が気になる方へ

健診で血糖・脂質・血圧を指摘されながら、「薬を始めると言われると、少し身構えてしまう」「まず体重を何とかしたい」と感じている方は、富士市・富士宮市・沼津市周辺にも少なくありません。

当院のダイエット外来では、医師が診察を行い、必要に応じて血液検査や血圧測定を通じて現状を確認します。美容目的の痩身ではなく、生活習慣病リスクを含めた体重管理を前提にしています。健診結果をお持ちいただくと、今の状態で何を優先すべきかを一緒に考えやすくなります。

「受診して怒られるのではないか」「自分の生活が悪いと言われるだけでは」という不安がある方もいると思います。生活習慣は、責めるためではなく、どこを変えると改善につながりやすいかを確認するために聞いています。

検査値や体調を確認しながら、無理のない体重管理を一緒に考えます。

富士市・富士宮市でダイエット外来を検討している方は、「富士市・富士宮市でダイエット外来をお探しの方へのご案内」も参考にしてください。沼津市周辺から通院を検討されている方には、「沼津市でのダイエット外来の選び方」もご用意しています。当院の診療方針については、「富士在宅診療所が選ばれる理由」でも詳しくご紹介しています。

よくある質問(FAQ)

男性更年期になると、血糖値は上がりやすくなりますか?

テストステロンは代謝にも関与しており、低下すると脂肪が増えやすく筋肉が減りやすくなります。これが間接的に血糖値に影響する場合はあります。

ただし、血糖値は男性ホルモンだけで決まりません。内臓脂肪の増加、筋肉量の低下、運動不足、食事内容、睡眠の質、飲酒習慣など、複数の要因が重なって高くなることがほとんどです。

「更年期だからしょうがない」と判断するより、HbA1cなどを血液検査で確認する方が、対策の手がかりになります。症状だけで判断するのは難しい指標です。

コレステロールや中性脂肪が高いのは、男性更年期のせいですか?

男性ホルモンの低下が脂質代謝に影響する場合があることは報告されています。しかし、LDLコレステロールは遺伝・体質の影響も大きく、体重を落としても思ったほど下がらない人がいます。

中性脂肪は食事・飲酒・内臓脂肪の影響を受けやすく、生活習慣の見直しで変化しやすい項目です。

LDLと中性脂肪は別の問題として、それぞれの原因と対策を確認することが先決です。数値によっては薬物治療が必要になる場合もあります。「男性更年期のせい」と一括りにすると、必要な対応が後回しになりやすいため注意が必要です。

血圧が高い場合、まず痩せれば薬を飲まなくて済みますか?

体重が減ることで血圧が下がる方はいます。肥満の是正、減塩、運動、節酒は、血圧を下げる方法として医学的に認められています。

ただし、血圧が高い状態を「痩せるまで様子を見る」と長期間放置してはいけません。高血圧は脳卒中・心疾患・腎疾患のリスクを高めます。

薬が必要かどうかは、数値の高さ、他のリスク因子(血糖や脂質の状態、喫煙歴など)を合わせて医師が判断します。自己判断で薬を飲まずに放置したり、飲んでいる薬を勝手にやめたりしてはいけません。

男性更年期が気になる場合、テストステロン検査を受けたほうがよいですか?

疲労感、意欲低下、性欲低下、抑うつ気分などが続く場合は、泌尿器科や男性更年期外来でテストステロン値を含めた評価を受ける選択肢があります。

同時に体重増加、血糖・脂質・血圧の異常がある場合は、生活習慣病の評価も並行して必要です。テストステロンだけでなく、HbA1c、脂質、肝機能、腎機能、血圧、腹囲を合わせて確認することで、「何が起きているのか」が見えてきます。

どこから相談すればいいか迷う場合は、健診結果を持って内科・ダイエット外来に相談するのも一つの方法です。血液検査の結果を見れば、次にどの専門科につなげるかも含めて判断しやすくなります。

マンジャロやリベルサスは、男性更年期太りにも使えますか?

「男性更年期だから使える」という判断基準はありません。これらの薬を使うかどうかは、体重・BMI・血糖値・HbA1c・既往歴・現在の内服薬・副作用リスクなどを確認したうえで、医師が判断します。

個人輸入での入手、自己判断での使用開始・増量・中止は行ってはいけません。適切な管理なしに使用すると、消化器症状(悪心・嘔吐・下痢など)にとどまらず、膵炎や脱水など重大なリスクが生じる場合があります。

気になる場合は、まず健診結果と体重の状態を医師に確認してもらい、適応があるかどうかを相談するところから始めてください。

【参考文献】
  1. 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」
  2. 厚生労働省 e-ヘルスネット「内臓脂肪型肥満」
  3. 日本内科学会「メタボリックシンドロームの診断基準(2005年)」
  4. 日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会「LOH症候群診療の手引き」
  5. 日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイド」
  6. 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」
  7. 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン(JSH2019)」
  8. 国立循環器病研究センター「生活習慣病予防と肥満」
  9. 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン」
  10. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)チルゼパチド(マンジャロ)電子添文
  11. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)セマグルチド経口薬(リベルサス)電子添文
  12. 日本睡眠学会「睡眠時無呼吸症候群と高血圧に関する提言」
  13. 厚生労働省「健康日本21(第二次)」

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