- 体重が増えると、歩行や階段などの日常動作の負担も増える
- 疲れやすさには、体重だけでなく筋力や持久力も関係する
- 一日中のだるさや眠気は、貧血、甲状腺、睡眠などの確認も必要
- 痩せれば全員の疲労が改善するわけではない
- 減量では、体重だけでなく食事量、筋肉、体調も一緒に見る
体重が増えてから、以前より疲れやすくなったと感じる方は少なくありません。体重が増えると、歩く、階段を上るといった動作にかかる負担も増えるため、体重に対して筋力や持久力が追いついていない場合、動くと疲れると感じやすくなります。ただし、一日中続くだるさや強い眠気まで、体脂肪や筋肉量だけで説明することはできません。貧血、甲状腺機能、血糖、睡眠時無呼吸症候群、更年期、服薬中の薬の影響なども、分けて確認する必要があります。
太ってから疲れやすくなることはあります。ただし原因は一つではありません
太ってから疲れやすくなったと感じるとき、その感覚は的外れではありません。体重が増えれば、歩く、階段を上る、立ち上がるといった日常動作の負荷も増えます。体重管理には、検査値の改善だけでなく、日常生活の負担を軽くするという意味もあります。詳しくはダイエットが健康や日常生活にもたらす変化で解説しています。
体重に対して筋力や持久力が十分でないと、同じ動作でも負担を強く感じます。体重が同じでも、筋力や全身持久力に余裕がある人と、そうでない人では動きやすさが異なります。疲れやすさには、体重だけでなく、体重に対する筋力や全身持久力も関係します。
一日中続くだるさや日中の強い眠気は、体重の増加だけでは説明できません。貧血、甲状腺機能、睡眠の質など、体脂肪や筋肉量とは別の要因も考えます。研究で肥満と疲労感の関連が報告されていても、それは集団としての傾向であり、一人ひとりの原因を特定するものではありません。
体重増加は疲れやすさの一因になりますが、疲れの原因は体重だけではありません。
まず「どのように疲れるのか」を分けて考えます
一口に「疲れやすい」といっても、その中身は一様ではありません。以下の分類は診断基準ではなく、症状を整理するための目安です。
歩いたり階段を上ったりすると疲れる
体を動かしたときに感じる疲れは、筋力、持久力、心肺機能、そしてそのときにかかる身体的な負荷の大きさによって左右されます。同じ距離を歩いても、体重や筋力、心肺機能の状態によって、感じる疲れの強さは変わります。
十分に寝ても一日中だるい
眠っても回復しないだるさがある場合は、貧血、甲状腺機能の異常、糖尿病、肝臓や腎臓の機能、服用中の薬の影響、気分の落ち込みなど、体を動かす場面とは別の要因を考える必要があります。
昼間に眠い、朝からすっきりしない
日中の強い眠気や寝起きの悪さは、睡眠不足や睡眠時無呼吸症候群など、睡眠そのものの質に関わる要因が背景にあることがあります。食後に眠気を感じたとしても、それだけで血糖値の急激な変動が起きている証拠とは言えません。
疲れ方が違えば、確認すべき原因も違ってきます。
| 疲れ方 | よくある特徴 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 動くと疲れる | 歩行や階段の昇り降り、荷物を持っての移動などで疲れやすい | 筋力、持久力、息切れ、胸の痛みなど |
| 一日中だるい | 十分に眠っても、日中ずっと体が重く感じる | 貧血、甲状腺機能、血糖、肝腎機能、服薬中の薬など |
| 昼間に眠い | 昼間の眠気が強く、朝からすっきりしない | 睡眠不足、いびきや無呼吸、睡眠の質など |
体脂肪が増えると、自分の体を動かす負担も増えます
日常動作では体重そのものが負荷になる
歩く、階段を上る、椅子から立ち上がるといった動作では、自分の体重を移動させます。体重が増えると、同じ動作でも必要なエネルギーが増え、相対的な運動強度も高くなりやすくなります。そのため、階段や歩行を以前より負担に感じることがあります。
「疲れるから動かない」が悪循環を作ることがある
疲れやすさを感じると、動くこと自体を避けたくなるものです。ただ、動かない期間が続くと、筋力や持久力はさらに落ちていき、次に体を動かしたときの負担はより大きくなります。体重、活動量、筋力・持久力が互いに影響し合いながら、この循環が続いていくことがあります。これは意志の弱さから起きているのではありません。膝や腰への負担が重なると、この循環はさらに強まることもあります。体重増加と膝・腰への負担については、別記事で扱っています。
脂肪組織、とくに内臓脂肪は慢性的な軽い炎症と関連します。ただし、この炎症が本人の感じる疲労を直接引き起こしているとは限りません。
体重の数字とあわせて、日常生活でどの程度動けているかも確認します。
筋肉量が多く見えても、疲れにくいとは限りません
筋肉の「量」と「力」は別に考える
肥満のある人では、絶対的な筋肉量が多い場合もあります。日常動作そのものが、体重を支える負荷になるためです。一方、体重に対してどの程度の筋力があるか、その筋肉を動作に使えているかは別に考えます。筋肉量が保たれていても、筋力や身体機能が体重に見合っていなければ、動作は重く感じられます。
BMIと体組成計で分かること、分からないこと
BMIは体重と身長から算出される指標で、脂肪と筋肉を区別できません。家庭用を含む多くの体組成計は、電気抵抗から体脂肪量や筋肉量を推定するBIA法を採用しています。測定条件や機器の推定式による影響があるため、一度の数値で診断するのではなく、できるだけ同じ条件で測り、経過を見るための参考にします。
肥満に筋肉量や筋力の低下が重なった状態は「サルコペニア肥満」と呼ばれます。見た目や家庭用体組成計の数値だけでは判断できず、筋力や身体機能を含めた評価が必要です。減量中の筋肉減少やサルコペニア・フレイルのリスクは、別記事で詳しく解説しています。
体重、筋肉量、体脂肪率のいずれか一つではなく、実際にどれだけ動けているかまで見ていきます。
体重以外に確認したい「疲れやすさ」の原因
体重が増えた時期と、疲れを感じ始めた時期が重なっていても、それだけで体重が原因と決めることはできません。
貧血・鉄不足、甲状腺機能、血糖の異常
月経のある女性や、食事量を減らしている人では、気づかないうちに鉄欠乏性貧血が進んでいることがあります。実際に当院でも、ダイエット治療前の血液検査で鉄欠乏性貧血が見つかった例があります。甲状腺機能の低下も、だるさや体重増加、むくみの原因になります。糖尿病や高血糖に伴う体調変化が、倦怠感につながることもあります。
睡眠時無呼吸症候群と睡眠の質
いびきや無呼吸を家族から指摘されている、起床時に頭痛がある、日中に強い眠気があるといった場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性も考えられます。体重管理と睡眠時無呼吸症候群の関係については、別記事で詳しく取り上げています。
更年期とホルモンの変化
更年期には、ホルモンの変化に伴って疲労感や睡眠の質の低下が起こることがあります。更年期の体重変化と筋肉量で触れているように、筋肉量の変化と体重増加が重なりやすい時期でもあります。体重増加と疲れやすさを、どちらも女性ホルモンの変化だけで説明すると、貧血や甲状腺疾患、睡眠障害などを見落とすおそれがあります。
突然の強い胸痛や呼吸困難、意識を失う・意識がもうろうとする症状がある場合は、救急要請を含めて速やかに医療機関を受診してください。黒い便、長引く発熱、意図しない体重減少がある場合も、ダイエットを始める前に早めの受診が必要です。疲れやすい人全員に緊急性があるわけではありませんが、こうした症状は先送りにしないでください。
疲れ方と経過を整理すると、体重以外に調べるべき原因が見えやすくなります。
痩せれば疲れにくくなるのでしょうか
体重が減ることで楽になる部分はある
体重減少に伴い、歩行や階段の負担が軽くなり、動きやすく感じる人はいます。睡眠時無呼吸症候群の症状、血糖値、関節への負担などが変わることで、体調の変化を感じる場合もあります。
食事量を減らしすぎると、別の疲れが出ることもある
食事量を極端に減らすと、エネルギー、たんぱく質、鉄などが不足し、別の疲れやだるさが出ることがあります。急激な食事制限に伴う脱水、血圧低下、吐き気も、ふらつきや疲労感の原因になります。また、減量では脂肪とともに除脂肪量も一部減ります。体重が減っていても、筋力や栄養状態をあわせて確認します。詳しくは減量中に筋肉を守る考え方をご覧ください。
体重減少の速さだけでなく、食事量、体調、筋力の変化も確認しながら進めます。疲れやすい人が、いきなり強い運動を始める必要はありません。体調や体力に応じて量と強度を調整し、無理なく続けられる活動から始めます。
マンジャロやリベルサスは「疲れを取る薬」ではありません
マンジャロやリベルサスに関心を持つ方のなかには、痩せれば疲れにくくなるのではないかと期待する方もいます。しかし、これらは疲労回復薬ではありません。国内では、マンジャロ(チルゼパチド)とリベルサス(セマグルチド)は、いずれも2型糖尿病の治療薬として承認されています。減量目的で使用する場合は承認された効能・効果とは異なるため、その位置づけと注意点を理解し、医師の診察を受けたうえで判断します。
体重減少に伴って動きやすく感じる人はいますが、薬そのものに疲労を改善する効能・効果があるわけではありません。マンジャロやリベルサスでは、吐き気、嘔吐、下痢、食欲低下などが現れることがあります。食事や水分を十分にとれなくなると、だるさやふらつきが強まります。マンジャロと食後の眠気の関係も、別記事で検討しています。
減量時には、脂肪だけでなく筋肉などの除脂肪量も一部減ります。これは薬が筋肉を直接分解するという意味ではなく、体重減少に伴ってみられる変化です。作用、副作用、使用できない場合については、マンジャロの解説とリベルサスの解説で詳しく紹介しています。
自己判断で薬の開始や増量、減量、中止をすることは避けてください。体調の変化があれば、まず処方を受けた医療機関へ相談することが基本になります。
薬を使うかどうかということと、疲れやすさの原因を調べるということは、別々に考える必要があります。
疲れやすさがある人ほど、体重以外も確認してから始めます
診察で伝えてほしいこと
診察では、いつ頃からどのような場面で疲れを感じるか、息切れや動悸、胸の痛み、めまい、いびきの有無、月経の状況、現在服用している薬などを伝えていただくことが助けになります。体重が増えた時期と疲れを感じ始めた時期がどの程度重なっているか、過去の健診結果や血液検査の結果があれば、それも参考になります。
血液検査で確認できることには限界もある
血液検査では、血算、鉄関連の項目、血糖、肝機能、腎機能、甲状腺機能などから、診察内容に応じて必要な項目を選びます。全員に同じ検査を行うわけではありません。検査の考え方は、ダイエット治療前に血液検査を行う理由で詳しく解説しています。
ただし、血液検査だけですべてが分かるわけではありません。睡眠時無呼吸症候群や心肺機能の状態は血液検査では評価できず、必要に応じて別の検査や診療科での確認が必要になります。症状によっては、一般内科、婦人科、睡眠医療、循環器などへつなぐこともあります。
富士市、富士宮市、沼津市周辺でダイエット外来を探している方も、疲れやすさがある場合は、薬の種類だけでなく、診察や血液検査を含めて相談できる医療機関かどうかを確認してみてください。
まず現在の体調を確認し、その結果を踏まえて減量方法を選びます。
まとめ
体重が増えると、歩行や階段の昇り降りなど、日常動作の負担も増えます。疲れやすさには、体重だけでなく、体重に対する筋力や持久力も関係します。一日中続くだるさや強い眠気があれば、貧血、甲状腺機能、睡眠の状態なども確認します。減量中も、体重の数字だけを追わず、食事量、筋力、体調のバランスを見ながら進めます。
体重が増えてから疲れやすくなったと感じている場合、それを体重だけの問題と決めつけず、一度、疲れ方や体調を整理することから始めてみてください。
よくある質問(FAQ)
【参考文献】
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」2024年
- Donini LM, et al. Definition and Diagnostic Criteria for Sarcopenic Obesity: ESPEN and EASO Consensus Statement. Obes Facts. 2022;15(3):321-335. doi:10.1159/000521241.
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- Latimer KM, Gunther A, Kopec M. Fatigue in Adults: Evaluation and Management. Am Fam Physician. 2023;108(1):58-69. PMID:37440739.

