- ストレスがあるだけで、リバウンドが決まるわけではありません。
- 注意したいのは、忙しい時期に間食・夜食・飲酒など、減量前の習慣が少しずつ戻ってくることです。
- 睡眠不足が重なると、食欲や生活リズムを保ちにくくなります。
- ストレスをゼロにすることより、忙しい日にも守れる最低限のルールを決めておく方が現実的です。
- 食生活が崩れ始めた段階で戻せれば、体重が少し増えても十分に立て直せます。
ダイエット中はうまく続けられていたのに、仕事が忙しくなってから間食が増えた。残業続きの週から、帰宅途中にコンビニへ寄るようになった。気づけば体重も、少しずつ元へ近づいている。こうした経験がある方は少なくありません。
「ストレスに負けた」と考えてしまいがちですが、実際に起きているのはもう少し複雑なことです。この記事では、ストレスそのものよりも「ストレスをきっかけに何が変わるか」に焦点を当て、忙しい時期でも崩れすぎないための考え方をお伝えします。
ストレスがあると、なぜリバウンドしやすくなる?
ストレスと食欲の関係には、個人差があります。ストレスがかかると食べる量が増える人がいる一方で、食欲が落ちる人や、ほとんど変わらない人もいます。健康な成人を対象とした系統的レビューでは、ストレスは食品全体の摂取量とわずかに関連していましたが、その関連は決して大きなものではありませんでした。一方で、ストレスは甘いものや脂っこいものなど、嗜好性の高い食品の選択を増やし、野菜など健康的とされる食品の摂取を減らす方向に働きやすいことも示されています。
つまり、「ストレスを感じれば誰でも過食する」とは言えません。問題になりやすいのは、ストレスによって食べる量そのものより、食べるものの選び方や、間食・飲酒・睡眠・活動量など、複数の生活習慣が同時に変化することです。
減量中は、意識的にこれらの習慣を変えていた方がほとんどです。その意識が、忙しさや疲労によって続けにくくなったとき、以前の習慣へ戻る動きが始まります。リバウンドが起きやすい人に共通する特徴については、別記事でも詳しく解説しています。
疲れた日に戻りやすいのは、食事そのものより「昔の習慣」
リバウンドの入口は、体重計の数字より先に、日々の行動に現れます。
たとえば、残業が続いた週から、帰宅途中にコンビニへ寄るようになった。休日に特に予定がないと、何度も冷蔵庫を開けるようになった。仕事の付き合いが増え、飲酒のあとに締めの一品を食べる機会も増えてきた。夕食の時間が遅くなり、帰宅前に菓子パンやスナックを買う習慣が戻ってきた。運動へ行く時間が取れなくなり、そのまま歩く量や活動量も減っていった。
こうした場面は、特別な出来事ではありません。よくある日常の延長として、多くの方に起こりうることです。
大切なのは、これらの行動を「意志が弱いから起きたこと」として片づけないことです。減量中に作った習慣は、忙しさが続くと維持しにくくなります。これは自然な流れであり、行動が変わった時点で気づければ、体重として表れる前に対応できます。
睡眠不足が重なると、食欲のコントロールはさらに難しくなる
忙しい時期は、睡眠時間も短くなりがちです。睡眠時間が短くなると、食べる量や間食の回数が増えやすくなることが、複数の臨床試験で報告されています。
以前は「睡眠不足になるとグレリンが増え、レプチンが減って食欲が強くなる」という説明がよく使われていました。しかし近年の研究では、短期間の睡眠制限だけでこれらのホルモンが一貫して変化するとは言い切れないことも分かってきています。ホルモンの変化だけでなく、起きている時間が長くなることで食べる機会そのものが増えることや、疲労によって日中の活動量が落ちることも、体重増加に関係していると考えられています。
睡眠不足が続いていると感じる方は、食事の内容だけを見直すより、睡眠時間そのものを見直す方が近道になることがあります。マンジャロやリベルサスを使用中の方で、疲労感やイライラが強く出ている場合は、男性更年期世代のストレスと食欲の関係も参考にしてください。
ストレスをなくそうとするより、「崩れた日のルール」を決める
ここまで見てきたように、ストレスや睡眠不足そのものを完全になくすことは現実的ではありません。忙しい時期や疲れる日は、誰にでもあります。
現実的な対策は、ストレスを消すことではなく、「崩れる日があっても、そこから大きく外れすぎないための最低ライン」を先に決めておくことです。
具体的には、以下のような工夫が挙げられます。
忙しくても、朝食や昼食を完全に抜かないようにします。空腹の時間が長くなるほど、夜にまとめて食べる量が増えやすくなるためです。夕食が遅くなりそうな日は、あらかじめ軽く何か口にしておく方法を決めておくと、帰宅後の食べ過ぎを防ぎやすくなります。
コンビニへ寄る日があっても構いません。その代わり、「主食・主菜・野菜が入った組み合わせを選ぶ」など、買い方のパターンを先に決めておくと、選択に迷う時間が減ります。
間食は禁止するより、量や回数を決める方が長く続けやすい方法です。飲み会が続く時期は、飲酒と締めの食事を毎回セットにしないことを意識するだけでも変化が出ます。
運動に行けない週があっても、日常の活動量までゼロにする必要はありません。エレベーターより階段を使う、一駅分歩くなど、続けられる範囲の行動を残しておいてください。
食べ過ぎた翌日に、極端な食事制限をすることは避けてください。強い空腹感が反動的な食べ過ぎにつながりやすいため、普段どおりの食事リズムへ戻すことを基本にしてください。
そして、食生活が崩れても、体重測定まで完全にやめないでください。測ることをやめてしまうと、変化に気づくタイミングが遅れます。
以下の表に、崩れやすい場面と、あらかじめ決めておきたいことをまとめました。
| 崩れやすい場面 | 起こりやすい変化 | 最低限決めておくこと |
|---|---|---|
| 仕事が忙しい | 昼食を抜き、夕食が遅く重くなる | 昼食を完全に抜かない |
| 帰宅が遅い | 夜食やコンビニ食が増える | 帰宅前に軽く食べる選択肢を決めておく |
| 飲み会が続く | 飲酒と締めの食事が重なる | 飲酒と締めの食事を毎回セットにしない |
| 睡眠不足が続く | 夜間の間食や活動量の低下が起きやすい | 食事だけでなく、睡眠時間の見直しも行う |
| 食べ過ぎた翌日 | 極端な食事制限や欠食に走りやすい | 普段どおりの食事リズムへ戻す |
※スマートフォンでは表を横にスクロールしてご覧いただけます。
完璧に守る必要はありません。忙しい日でもこの最低ラインを守れれば、体重が大きく戻る前に踏みとどまりやすくなります。
リバウンドは「体重が増えてから」ではなく、行動が変わった時点で対処する
体重の変化は、生活行動の変化より遅れて現れます。次のような変化に心当たりがあれば、体重として表れる前の早い段階といえます。
間食の回数が増えた。夜食が戻ってきた。飲酒の日が増えた。睡眠時間が短くなった。コンビニや外食の頻度が上がった。歩く量や運動の機会が減った。体重計に乗らなくなった。
これらのうち一つでも当てはまれば、そこから見直しを始めてください。体重の増加幅や、何kg戻ったら受診すべきかといった具体的な目安については、ダイエット卒業後の体重管理で詳しく解説しています。数字より先に、行動の変化に目を向けることが、この記事で伝えたいポイントです。
マンジャロ・リベルサスを使っていても、ストレス時の生活パターンは別に考える
マンジャロやリベルサスを使用中の方の中には、食欲が落ち着き、間食や食べ過ぎが自然に減っている方もいます。ただし、これらの薬はストレスそのものを治療する薬ではありません。ストレスや疲労がかかったときに、飲酒量が増えたり、活動量が落ちたりすることまでは防げません。
薬で食欲が落ち着いている今の期間は、自分が忙しい日にどんな行動が崩れやすいかを確認しておくのに適した時期です。薬をやめた後まで見据えて、食事や間食のパターンを整えておくことが、その後の体重管理につながります。薬をやめた後に食欲がどう変化するかについては、GLP-1ダイエット終了後の食欲復活と生活習慣で詳しく取り上げています。
マンジャロは日本では2型糖尿病治療薬として承認されており、ダイエット目的での使用は適応外使用にあたります。リベルサスも同様に、2型糖尿病治療薬としての承認薬です。糖尿病治療として使用している方は、体重を理由に自己判断で中止してはいけません。用量の変更、中止、再開は、いずれも自己判断で行ってはいけません。マンジャロを中止した後のリバウンドについてはマンジャロをやめたらリバウンドする?やめ方・減量後の維持・再開の考え方、リベルサスについてはリベルサスをやめた後に体重を戻さないためにで、それぞれ詳しく解説しています。
「ストレスのせい」で片づけず、一度医療機関へ相談した方がよい場合
ストレスによる食生活の乱れは、多くの場合、生活の見直しで対応できます。ただし、以下のような状態がある場合は、ダイエットの範囲だけで対応しようとせず、医療機関へ相談してください。
短期間で体重が大きく変化している場合や、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの持病がある場合、内服中の薬がある場合は、体重の変化が体全体の状態に影響していることがあります。
自分では止められない食べ方を繰り返している場合、嘔吐などで帳尻を合わせている場合、強い不眠が何週間も続いている場合、強い抑うつや不安があり日常生活や仕事に支障が出ている場合は、ダイエットの工夫だけで対応できる段階を超えている可能性があります。こうした状態を、記事の内容だけで診断することはできません。心当たりがある場合は、早めに医療機関へ相談してください。
当院では、体重の推移だけでなく、食事、睡眠、運動、内服薬、健診結果などを確認しながら、必要に応じて血液検査を行い、状態を把握したうえで方針を相談しています。血液検査は、ストレスそのものを測定するためのものではありません。血糖、HbA1c、脂質、肝機能、腎機能など、体重増加に伴う代謝の変化や、薬を使用する場合の安全性を確認するために行います。どの検査が必要かは、体調や背景によって異なります。
ストレスで食生活が崩れても、早い段階から立て直せる
リバウンド対策は、一生完璧な生活を続けることではありません。仕事や家庭の事情で、生活が一時的に崩れる時期は誰にでもあります。問題になるのは、崩れたこと自体より、その状態を何か月も放置してしまうことです。
体重が大きく戻ってから動き出すより、変化に気づいた段階で相談する方が、対応の選択肢は広くなります。再受診を失敗と考える必要はありません。
富士市、富士宮市、沼津市周辺にお住まいの方で、以前ダイエットに取り組んだものの体重が戻り始めた方、マンジャロやリベルサスをやめるタイミングに不安がある方、仕事が忙しくなり食生活が崩れてきた方は、健診結果も含めて相談することができます。ダイエット外来は、大きく体重が戻ってから訪れる場所ではなく、変化に気づいた段階で相談できる場所です。
よくある質問(FAQ)
【参考文献】
- Hill D, Conner M, Clancy F, et al. Stress and eating behaviours in healthy adults: a systematic review and meta-analysis. Health Psychology Review. 2022;16(2):280-304.
- Zhao M, Sela Y, Chao AM, et al. Effect of sleep duration on dietary intake, desire to eat, measures of food intake and metabolic hormones: A systematic review of clinical trials. Clinical Nutrition ESPEN. 2021.
- Covassin N, Singh P, McCrady-Spitzer SK, et al. Effects of Experimental Sleep Restriction on Energy Intake, Energy Expenditure, and Visceral Obesity. Journal of the American College of Cardiology. 2022;79(13):1254-1265.
- Lengton R, et al. Glucocorticoids and HPA axis regulation in the stress–obesity connection: A comprehensive overview of biological, physiological and behavioural dimensions. Clinical Obesity. 2025;15(2):e12725.
- 日本イーライリリー株式会社「マンジャロ皮下注アテオス 電子添文」
- ノボ ノルディスク ファーマ株式会社「リベルサス錠 添付文書」
- 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「ストレス」「睡眠と生活習慣病」
- 厚生労働省「医療広告ガイドライン」「医療広告ガイドラインに関するQ&A」

