ダイエットで食べる量を減らしすぎると体重を維持しにくくなる理由|栄養不足と「食べるのが怖い」を考える

  • 食事量を減らせば体重は落ちますが、減らすほど維持しやすくなるわけではありません
  • 栄養不足と体重の再増加を、単純な因果関係で結びつける十分な根拠はありません
  • ビタミンやミネラルの不足を「代謝が落ちる原因」として単純化すべきではありません
  • 減量中から、目標体重に達したあとも続けられる食事量を意識することが必要です
  • 薬で食事がほとんど取れない状態を放置してはいけません

摂取エネルギーが消費エネルギーを下回れば、体重は減ります。食事量を減らすことは、体重を落とす方法として単純に有効です。

ただし、「減らせば減らすほどダイエットがうまくいく」わけではありません。食事量を大きく削って痩せたあと、その体重を維持できずに戻ってしまう方は少なくありません。

この記事で扱うのは、体重を落とす技術ではなく、落とした体重をどこまで続けられる食事で迎えるかという問題です。栄養不足とリバウンドの関係、ビタミンやミネラル不足についてよく言われる説明、マンジャロやリベルサスで食欲が大きく落ちた場合の考え方についても触れます。リバウンド全体の仕組みについては、リバウンドが起こる仕組みでも取り上げています。

目次

食べる量を減らせば体重は減ります。でも「減らすほどいい」とは限りません

「食べないと逆に太る」という説明は正確ではない

体重は、摂取エネルギーと消費エネルギーの差によって変化します。食べる量を減らせば、体重は減少します。これは医学的に確立した基本です。

インターネット上では、「食べなさすぎると体が飢餓状態と判断し、かえって脂肪をため込みやすくなる」という説明を見かけます。しかし、この説明は正確ではありません。極端な食事制限を続けている間に体重が増加へ転じるという医学的根拠はありません。

見るべきなのは「どこまで食事を削るか」

問題は、食べる量を減らすこと自体にあるのではありません。どこまで食事を減らすかという設計を誤ると、体重が落ちても、その状態を維持できなくなります。

体重を落とせるかどうかより、落としたあとにその食事から抜け出せるかどうかが、この記事で扱う中心の問題です。

「量を減らすほど成功」という考え方が、体重維持を難しくする

脂肪以外のものまで減りやすくなる

摂取エネルギーを大きく減らすほど、一般には体重も速く減ります。ただし、減るのは脂肪だけではありません。エネルギー摂取が大きく不足した状態が続くと、筋肉を含む除脂肪量も一緒に減少しやすくなります。減少の程度は、減量のペース、たんぱく質摂取量、運動の有無、年齢や体格によって異なります。

このとき、消費エネルギーや食欲にも変化が起こることが知られています。減量後に消費エネルギーが低下しやすくなる現象や、食欲に関わるホルモンの変化については、痩せたあとに体が体重を戻そうとする仕組みで詳しく説明しています。短期間で体重を大きく落とした場合に何が起こりやすいかは、急速減量と筋肉・体重維持の関係も参考にしてください。

続けられない食事量はいずれ戻る

もう一つの問題は単純です。極端に少ない食事量を、一生続けることはできません。どこかの時点で、食事量は増えます。増えること自体は自然な変化ですが、少ない食事量に慣れた状態で急に量を戻すと、体重は増えやすくなります。

「どれだけ減らせたか」を減量の成功指標にすると、この「戻すとき」の設計が抜け落ちてしまいます。

「栄養不足だから太る」という説明には注意が必要です

食事量を減らすとき、栄養素ごとの減り方は一様ではありません。ここを分けずに「栄養不足だから太る」とまとめてしまうと、必要な対策を見誤ります。

たんぱく質不足は筋肉を守るうえで問題になる

食事全体の量を減らすとき、たんぱく質の摂取量も一緒に落ちていることがあります。たんぱく質は、筋肉を含む除脂肪量を保つために必要な栄養素です。総エネルギーを減らしながらでも、たんぱく質の摂取量を保つことで、筋肉量の低下をある程度抑えられることが研究で示されています。レジスタンス運動を組み合わせた場合、その効果はより明確になります。

ビタミンやミネラル不足を「痩せない原因」と単純化しない

一方、鉄やビタミン、ミネラルの不足については、健康への影響と体重への影響を分けて考える必要があります。

これらの栄養素が不足すれば、貧血や倦怠感、免疫機能の低下など、健康上の問題につながります。この点は医学的にはっきりしています。

しかし、「ビタミンが不足すると脂肪が燃えなくなる」「ミネラルが足りないと代謝が止まる」というように、微量栄養素の不足が体重の再増加を直接引き起こすという説明には、十分な根拠がありません。肥満と微量栄養素不足の間に関連が報告されている研究はありますが、そこから「不足を補えばリバウンドしにくくなる」と結論づけることは、現時点のエビデンスでは支持されません。

栄養不足を軽視してよいという意味ではありません。栄養不足は、それ自体が体調不良や治療継続の妨げになります。ただし、「栄養不足がそのままリバウンドの原因になる」という単純な図式で説明するべきではない、というのがこの記事の立場です。サプリメントで補えば痩せた体重を維持しやすくなる、という説明も同様に、根拠が確立していません。

「痩せるための食事」から「続けられる食事」へ切り替える

ダイエットのゴールは、食事量を限界まで減らすことではありません。目標体重に近づいたあとに、日常生活と両立できる食事へ移行できるかどうかが、体重を維持できるかどうかを左右します。

減量期の食事を一生続ける必要はない

減量期に使っていた食事量を、そのまま一生続ける必要はありません。減量期はエネルギーを控えめにし、維持期にはやや量を戻す。この切り替えを想定しておくことが、リバウンドを防ぐ土台になります。減量後の体重管理を具体的にどう進めるかについては、減量後の体重管理にまとめています。

食事量を増やした直後の体重だけで判断しない

食事量を増やした直後に体重が増えても、それがすべて脂肪の増加とは限りません。糖質摂取量が戻ると、体内の水分量も一緒に変化します。数日単位の変動だけで判断せず、体重の推移を数週間単位で見ることが必要です。

「最低限どこまで減らせるか」ではなく「どこまで戻せるか」

この記事で伝えたいのは、「どこまで食事を減らせるか」を競うのではなく、「目標体重に達したあと、どこまで食事量を戻せるか」を先に考えておくという発想の転換です。「この食事量なら必ず維持できる」という保証はありませんが、減量中からこの視点を持っておくことが、維持期の失敗を減らします

比較項目 減量期にありがちな考え方 体重維持を考えた食事
食事量の目安 とにかく少なくする 続けられる範囲で調整する
たんぱく質 後回しになりやすい 意識して確保する
栄養不足への向き合い方 気にしない、または過度に恐れる 健康面への影響を確認しつつ、体重への影響は分けて考える
食事を戻すとき 怖くて量を増やせない 段階的に増やし、数週間単位で判断する
ゴールの捉え方 目標体重に到達すること 到達後も続けられる食事に移行すること

※スマートフォンでは表を横にスクロールしてご覧いただけます。

運動をしないまま食事だけを減らすときに考えたいこと

運動の目的は消費カロリーだけではない

食事だけを減らして体重を落とすことは可能です。ただし、運動には消費カロリーを増やす以外の役割もあります。筋肉量や日常生活での身体機能を保つこと、活動量そのものを維持することです。

激しい運動を新しく始める必要はありません。無理のない範囲で体を動かす習慣を保つことが、除脂肪量を守るうえで助けになります。具体的な内容は、リバウンド予防としての筋トレを参考にしてください。

運動をしなければ必ずリバウンドするわけではありません。ただ、食事量だけを頼りに体重を落とし続けると、筋肉量や体力を保つ手段が少なくなります。

マンジャロ・リベルサスで「食べられないほど効く」は成功の指標ではありません

食欲が減っても必要な栄養が不要になるわけではない

マンジャロ(一般名チルゼパチド、GIP/GLP-1受容体作動薬)やリベルサス(一般名セマグルチド、GLP-1受容体作動薬)を使用すると、食欲が大きく落ちる方がいます。いずれも日本国内では2型糖尿病治療薬として承認されており、体重管理を目的とした使用は適応外使用にあたります。

食欲が落ちて食べられないほど、薬がよく効いていると感じる方がいます。しかし、治療の目標は食事を取れなくすることではありません。体が必要とするたんぱく質や栄養素は、食欲の有無にかかわらず変わりません。

食事量が大きく減っている場合、体重の推移だけでなく、食事の内容、水分摂取量、消化器症状の有無、体調の変化を合わせて見る必要があります。必要に応じて、血液検査で栄養状態を確認することもあります。

薬を自己判断で増減・中止してはいけない

薬を自己判断で増量、減量、中止、再開してはいけません。 用量の調整や中止のタイミングは、体調や治療の経過を踏まえて医師が判断します。マンジャロを中止したあとの体重管理については、マンジャロをやめたあとの体重維持で詳しく解説しています。

体重が減っていても、一度医師に相談した方がよい状態

食事が十分に取れない状態が続く

体重が落ちていても、次のような状態が続く場合は、順調な減量とはいえません。食事がほとんど取れない日が続いている。水分も十分に飲めていない。嘔吐が続いている。強い疲労感やふらつきがある。

体重の減少に体調がついてきていない

こうした状態は、脱水や栄養不足のサインである可能性があります。診察のうえで、食事内容や体重の推移、内服薬、既往歴を確認し、必要に応じて血液検査を行うことがあります。血液検査だけで栄養状態のすべてがわかるわけではありませんが、体調不良の背景を把握する手段の一つになります。

食べる量を減らし続けるより、続けられる方法を探す

食事量をどこまで減らせるかではなく、目標体重に達したあとにどこまで食事を戻せるかを、減量中から考えておくことが必要です。

食事量だけでなく、睡眠や日々のストレスも、食生活が崩れ始めるきっかけになります。睡眠不足と食欲の関係は睡眠不足とリバウンドの関係、ストレスと食行動の関係はストレスで食生活が崩れる理由で取り上げています。

体重が完全に戻ってから見直すのではなく、食事量を減らしすぎていると感じた時点、あるいは食事を戻すことに不安を感じた時点で、一度立ち止まることに意味があります。

富士市・富士宮市・沼津市周辺で、食事量を減らしすぎている方、マンジャロなどで食欲が大きく落ちている方、目標体重に近づいたものの食事を戻すことに不安がある方は、医療機関で体重以外の状態も含めて確認する方法があります。

まとめ

食事量を減らせば体重は落ちます。ただし、減らすほど体重を維持しやすくなるわけではありません。

栄養不足と体重の再増加を、単純な因果関係で結びつける十分な根拠はなく、ビタミンやミネラルの不足は健康面への影響として捉えるべきものです。

減量中から、目標体重に達したあとも続けられる食事量を意識しておくことが、リバウンドを防ぐうえでの現実的な対策です。

よくある質問(FAQ)

食べる量が少なすぎると、本当にリバウンドしやすくなりますか?

極端に少ない食事量は、その量を長期間続けることが難しくなります。少ない食事量に体が慣れた状態で食事を元に戻すと、体重が増えやすくなります。「栄養不足そのものが直接リバウンドを引き起こす」という単純な説明ではなく、続けられない食事量が結果的に維持を難しくする、という理解のほうが実態に近いです。減量中から、目標体重に達したあとの食事量を意識しておくことが、体重を維持するうえで役立ちます。

ビタミンやミネラルが不足すると、痩せにくくなりますか?

ビタミンやミネラルの不足は、貧血や倦怠感、免疫機能の低下など、健康上の問題につながります。この点ははっきりしています。一方、「不足すると代謝が落ちて痩せにくくなる」「補えば痩せる」という説明には、十分な根拠がありません。栄養不足を軽視してよいわけではなく、体重とは別に、健康を守るために必要な栄養素として捉えることが適切です。

食欲がなくても、無理に食べたほうがいいですか?

空腹感がなくても、体はたんぱく質やビタミン、ミネラルを必要としています。特にたんぱく質は、筋肉を含む除脂肪量を保つうえで欠かせません。無理に満腹になるまで食べる必要はありませんが、食事の回数や量が極端に少ない状態が続いている場合は、内容を見直す価値があります。食事がほとんど取れない状態が数日以上続く場合は、様子を見続けず、医療機関で相談してください。

食事量を戻すのが怖いのですが、どう考えればいいですか?

食事量を増やしたときに体重が一時的に増えても、それがすべて脂肪の増加とは限りません。糖質摂取量の変化に伴って、体内の水分量も変わります。数日単位の増減で判断せず、数週間単位の推移を見ることが必要です。食べることへの不安が強く、食事量を極端に制限し続けている場合や、体重の変化に強くとらわれている場合は、通常のダイエットの範囲を超えている可能性があります。そうした状態が続くときは、一人で抱え込まず、医療機関に相談してください。

マンジャロで食欲がほとんどない状態は、うまくいっている証拠ですか?

食欲の低下は、マンジャロ(チルゼパチド)やリベルサス(セマグルチド)の作用として起こり得ますが、食べられないほど強く出ている状態が、治療として望ましいとは限りません。体が必要とする栄養素は、食欲の有無にかかわらず変わりません。食事がほとんど取れない状態が続く場合は、薬の量や治療方針の見直しが必要なことがあります。自己判断で薬を増減、中止、再開してはいけません。

【参考文献】
  1. Pasiakos SM, Cao JJ, Margolis LM, et al. Effects of high-protein diets on fat-free mass and muscle protein synthesis following weight loss. FASEB Journal, 2013.
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  4. García OP, Long KZ, Rosado JL. Impact of micronutrient deficiencies on obesity. Nutrition Reviews, 2009.
  5. Rosenbaum M, Leibel RL. Adaptive thermogenesis in humans. International Journal of Obesity, 2010.
  6. Sumithran P, et al. Long-term persistence of hormonal adaptations to weight loss. New England Journal of Medicine, 2011.
  7. マンジャロ皮下注 電子添文(日本イーライリリー株式会社)
  8. リベルサス錠 電子添文(ノボ ノルディスクファーマ株式会社)
  9. 日本肥満学会. 肥満症診療ガイドライン2022. ライフサイエンス出版, 2022.
  10. 厚生労働省. 医療広告ガイドライン(医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針)2018年改訂版.

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