- 以前より食事を減らしていても、今の消費カロリーを下回っているとは限りません。
- 食事の見た目の量とカロリーは別です。飲み物、調理の油、間食などが記録から抜けることもあります。
- 肥満のある集団では、実際より摂取カロリーを少なく申告する傾向が研究で報告されています。ただし、個人の食べ方を体格だけで判断することはできません。
- 体重と体組成が長く安定している成人では、平均の摂取カロリーと消費カロリーがおおむね釣り合っています。今の体重を維持するにも、エネルギーは必要です。
- 食事量の感覚と体重の経過が合わないときは、休日を含む数日間の食事記録と、数週間の体重の推移を一緒に確認します。
ダイエット外来では、「食べている量は少ないんです」という相談を受けます。ご飯を減らした、おかわりをやめた、間食を控えた。それでも体重が変わらなければ、「自分は代謝が低いのでは」と考えるのも自然です。
ここで確認したいのは、何と比べて少ないのか、飲み物や調理の油まで含めているか、そして体重が増えているのか、減らずに保たれているのかです。外来では、食事量の感覚と体重の経過が合わないとき、記録を一緒に確認します。
この記事では、食事を減らしても痩せない理由、今の体重を維持するために必要なカロリー、食事量を少なく見積もりやすい場面を説明します。食事の自己申告を調べた研究と、マンジャロ使用後に以前の食べ方に気づくことがある、という外来での経験も取り上げます。
食事を減らしても痩せないのは、なぜでしょうか
「以前より食べていない」ことと、「体重が減る量になっている」ことは同じではありません。以前の食事から減らせたかどうかに加えて、今の体が使うエネルギーとの関係を考えます。
以前より減らしても、体重の増加が止まる段階のことがある
夕食のご飯をおかわりしていた人が一杯にすれば、本人にとっては確かに「減らした」食事です。しかし、減らしたあとの摂取カロリーが、今の消費カロリーを下回っているかどうかは別に確かめる必要があります。
説明用の仮定として、1日の消費量が2,200kcalの人を考えます。摂取量を2,600kcalから2,200kcalへ減らした場合、以前より400kcal少なくなっています。それでも摂取と消費が釣り合うため、長期的には体重の増加が止まっても、減量にはつながりません。
これは特定の患者さんの数字でも、推奨する摂取量でもありません。「減らしたのに痩せない」という状況を説明する例です。体重が増え続けていた人なら、増加が止まったことも改善の一つです。その変化を確認したうえで、次の調整を考えます。
「少ない」の基準は、人によって違う
食事が少ないかどうかを判断するとき、以前の自分、家族や同僚、「普通はこれくらい」というイメージと比べていることがあります。同じ食事でも、何と比べるかで多くも少なくも感じられます。
家族より少なく食べていても、必要なエネルギーが同じとは限りません。身長や体重、年齢、筋肉量、仕事や運動で体を動かす程度が違えば、消費カロリーも変わります。ほかの人の食事量を、そのまま自分の減量の基準にはできません。
食事の見た目の量とカロリーは別
食事を「少ない」と感じるときは、皿の大きさや品数、満腹感で判断しがちです。一方、カロリーは食材や調理法でも変わります。同じ野菜でも、蒸した料理と油で炒めた料理ではエネルギー量が違います。
食べた物の大きさや重さを把握していても、調理の油、ドレッシング、飲み物などを数えていなければ、摂取カロリーは少なく見積もられます。「ご飯を少なくした」だけでは、1日全体の摂取量がどれくらい変わったかまでは分かりません。
今の体重を維持するにも、カロリーは必要です
「食べていないのに太る」という言葉が、実際には「体重が減らない」という意味で使われていることがあります。体重が増え続けている状態と、体重が多い状態で変わらない場合を分けて考えると、食事と消費カロリーの関係を理解しやすくなります。
基礎代謝ではなく、1日の総消費エネルギーと比べる
基礎代謝は、呼吸や体温の維持など、生命を保つために使われるエネルギーです。1日の総消費エネルギーには、これに加えて食事の消化・吸収で使う分と、家事、通勤、仕事、運動などの身体活動で使う分が含まれます。
体重を維持するために必要な量を考えるときは、摂取カロリーを基礎代謝だけと比べるのではなく、1日の総消費エネルギーと比べます。運動をしていない日でも、立つ、歩く、家事をするといった活動でエネルギーを使っています。
総消費エネルギーは、体格、年齢、性別、活動量などで変わります。体格が大きい人は、絶対量として多くのエネルギーを使うこともあります。「太っているから代謝が低い」と一律には言えません。
米国国立糖尿病・消化器・腎疾患研究所(NIDDK)の体重計画ツールも、体格や活動量などから、目標体重への到達と維持に必要なカロリーを個別に推定する仕組みです[4]。ただし、こうした計算は目安であり、その人の消費量を正確に測定した値ではありません。
体重が安定していれば、平均の摂取と消費はおおむね釣り合っている
体重と体組成が数か月ほぼ一定なら、平均の摂取カロリーと消費カロリーはおおむね釣り合っています。体重が増えていなくても、今の体を維持するためのエネルギーは摂っている、ということです。
これは1日ごとの話ではありません。食事が多い日と少ない日、よく動く日と動かない日を含めた、長期的な平均の関係です。体重を減らすには、平均の摂取カロリーが消費カロリーを下回る状態が必要ですが、栄養を確保しながら調整します。
なお、短期間の体重変化には水分や便通も関わります。体重が同じでも脂肪と筋肉の割合が変わることがあるため、体重の数字だけで食事量を判断しないようにします。
申告量と体重の経過が合わないときは、推定値も確認する
仮に総消費量が約2,200kcal/日と推定される人が、摂取量を1,200kcal/日と申告し、数か月にわたって体重と体組成がほぼ一定だったとします。計算上は1日1,000kcalの差がありますが、この差をそのまま記録から抜けている食事量とは判断できません。
外来では、食事記録と消費量の推定の両方を確認します。
- 飲み物、調理の油、調味料、間食、外食が記録から抜けていないか
- 数日間の記録が、休日も含めた普段の食生活を表しているか
- 消費量の計算で想定した活動量が、実際の生活と合っているか
- 消費量の推定式による誤差や、筋肉量などの個人差がないか
- 体組成やむくみなど、体重の解釈に影響する変化がないか
体重の推移から、摂取カロリーを一つの数字として正確に逆算することはできません。ただし、食事記録、推定した消費量、体重の経過が大きく食い違っていれば、確認すべき点があります。記録された数字と計算結果を、そのまま正解として扱わずに照らし合わせます。
摂取カロリーを少なく見積もりやすい場面
見落としやすいのは、食事として意識していない飲み物や、一回ごとは少量の間食などです。普段の食べ方を確かめるときは、次の場面を振り返ります。
| 少ないと感じる理由 | 見落としやすいもの | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 料理の量は控えめにしている | 炒め油、ドレッシング、マヨネーズ、バターなど | 数回だけ実際に量り、普段の使用量を確認する |
| 飲み物は食事に数えていない | 甘い飲み物、カフェラテ、スポーツドリンク、果汁飲料 | 栄養成分表示を見て、飲んだ量や本数と合わせて記録する |
| お酒は付き合い程度 | アルコール飲料、おつまみ、締めの食事 | 飲んだ日だけでなく、1週間の合計で確認する |
| 味見をしただけ | 調理中の味見、つまみ食い、家族の食べ残し | 数日間、食卓以外で口にしたものもメモする |
| 間食はちょっとだけ | 個包装のお菓子、職場でもらうお菓子、移動中の間食 | 包装や写真を残し、1日の個数と回数で見る |
| 平日は気をつけている | 休日の外食、会食、普段より多い食事や間食 | 休日を含めて記録し、1週間の平均で確認する |
※スマートフォンでは表を横にスクロールしてご覧いただけます。
ここで確認したいのは、これらが食事記録から抜けていないかという点です。飲み物も、飲んだ量と頻度を含めて記録します。一回の量が少なくても、回数が増えれば1日や1週間の合計は変わります。
栄養成分表示では、「100mL当たり」なのか「1本当たり」なのかも確認してください。同じ商品でも、実際に飲んだ量に合わせて考える必要があります。外食のカロリーは正確に分からないこともあるため、まずは料理名と量、写真を残すだけでも役立ちます。
肥満のある集団では、摂取カロリーの過小申告が報告されています
食べた物や量を本人に記録してもらったり、聞き取ったりする方法を自己申告といいます。研究では、肥満のある集団で、実際より摂取カロリーを少なく申告する傾向が報告されています。
「少なく食べているのに痩せない」を調べた研究
1992年の研究では、減量治療を希望して受診した肥満のある224人のうち、「1日1,200kcal未満に抑えているのに痩せない」という経過をもつ10人を詳しく調べました[1]。この10人では、代謝の異常よりも、摂取量の過小申告や身体活動の過大評価が目立ちました。
14日間の評価で、総消費エネルギーと安静時代謝量は、体組成から予測される値との差が5%以内でした。一方、摂取量は実際の量を基準にして平均47%少なく申告され、身体活動は平均51%多く申告されていました。
ただし、痩せにくさを訴えた人から選ばれた10人の結果です。この割合を、肥満のある人全体に当てはめることはできません。
ほかの研究でも、自己申告と客観的な評価に差がある
申告の正確さを調べる研究では、本人の申告を、別の方法で評価したエネルギー量と比較します。よく使われる二重標識水法は、特別な水を飲んでもらい、その成分の変化から日常生活で使ったエネルギーを評価する研究方法です。
体内に蓄えられるエネルギーがほぼ変わらない期間なら、消費量が摂取量の目安になります。体重や体組成が変わる期間は、体に蓄えた分や減った分も考慮します。食べた物を直接数える検査ではありません。
米国のOPEN研究のデータを用いた2007年の報告では、男女390人の食事申告を、二重標識水法などによる評価と比較しました[2]。肥満のある群とない群の両方で過小申告がみられ、誤差は性別や申告方法によって異なっていました。著者らは、自己申告による方法では、肥満のある群の摂取量を十分に捉えられないと結論しています。
BMI30以上の人の食事申告を扱った34本の論文を評価した系統的レビューでも、BMI30以上であることと、摂取量の過小申告との関連が報告されています[3]。これらの結果は、食事の自己申告だけでは実際の摂取量を捉えきれない場合があることを示しています。
体格だけで、その人の食べ方は判断できない
研究で示されているのは集団で見た傾向です。「体重が多い人ほど必ず食事量を把握できていない」という意味ではなく、肥満のない人にも過小申告はみられます[2]。
誤差が生じる理由も、食べたことを忘れる、量を少なめに見積もる、飲み物や油を数えない、記録中だけ食べ方が変わるなど、さまざまです。申告と評価の差から、その人が意図して隠しているのか、食事量を把握する力が弱いのかまでは判断できません。
マンジャロ使用後に、以前の食べ方に気づくことがある
外来では、マンジャロを使って食事量や間食が変わったあと、「以前は意外と食べていた」と話す方もいます。食欲が落ち着いたことで、以前の間食の回数や、一食の量に気づく場合があります。
ただし、今の食欲を基準に振り返ると、以前の食事が多く感じられる面もあります。この気づきだけで治療前の過小申告を証明することはできません。また、薬で食べられなくなった量が、その人に必要な食事量とは限りません。
糖尿病のない過体重・肥満の成人114人を対象とした6週間の試験では、チルゼパチド(マンジャロの成分)は、3週目の昼食の試験食で、プラセボより摂取エネルギーを約525kcal少なくしました[6]。これは試験食1回の結果で、1日全体の減少量ではありません。食欲や摂取量が変わることを示した研究ですが、使用前の食事量の認識が正確になるかを調べたものではありません。
2026年9月改訂の国内の電子添文では、マンジャロの効能・効果は2型糖尿病です[7]。糖尿病のない方が減量目的で使う場合は適応外使用になります。同じ成分で肥満症の適応をもつ別製品もありますが、対象となる条件があり、マンジャロと同じには扱えません。
主な副作用は吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹痛などの胃腸症状です。急性膵炎などの重い副作用も報告されています。吐き気で食べられない状態を「よく効いている」と考えず、つらい症状は処方医に相談してください。
用量の変更や通常の治療中止は、処方医と相談してください。ただし、持続する激しい腹痛や嘔吐がある場合は使用を中止し、速やかに診察を受けてください[7]。個人輸入は避けてください。作用や副作用、適応外使用の詳細は、マンジャロの作用・副作用と適応外使用についての解説にまとめています。
代謝の個人差や病気も、食事記録と並行して確認する
消費エネルギーには個人差があります。同じ体重でも、筋肉量や日中の活動量が違えば必要なエネルギーは変わります。食事量の見落としを確認することと、代謝や病気を調べることは、並行して進めます。
減量後は、必要なエネルギーが少なくなる
減量後は、体が小さくなった分だけ消費エネルギーが減り、新しい体重を維持するために必要なカロリーも少なくなります[5]。減量前と同じ食事量に戻すと、今の消費量を上回ることがあります。
それに加えて、体格の変化だけでは説明できない消費量の低下がみられる人もいます。これが代謝適応です。程度には個人差があり、体重が安定したあとに小さくなる研究もあります[8]。減量後の代謝の変化と生活の調整は、急な減量後に起こる代謝適応とリバウンドの関係で詳しく説明しています。
薬や甲状腺の病気が関わる場合もある
薬の中には、食欲や体重に影響するものがあります。服用中の薬と、体重が増え始めた時期を一緒に確認します。精神科の薬との関係は、向精神薬による体重増加についての記事で取り上げています。
甲状腺機能低下症が疑われる場合は、診察に加えて、甲状腺ホルモンなどの血液検査で調べます。体重が減らないという理由だけで原因を決めず、症状や経過に応じて確認します。
短期間で急に体重が増え、足のむくみ、息切れ、尿の量の変化などを伴う場合は、体に水分がたまっていることがあります。この場合は食事量の見直しだけで様子を見ず、早めに診察を受けてください。
食事量を確かめるには、休日を含む記録と体重の推移を見る
まずは休日を含めて3〜7日間、いつもの食事を記録します。目的はカロリーを完璧に計算することではなく、普段は数えていなかった飲み物や間食、量の見積もりの違いを見つけることです。
写真に、量と食べ残しの情報を添える
写真は、あとから食事を振り返る助けになります。ただし、写真だけでは料理に使った油や、実際に食べた量が分からないこともあります。無理のない範囲で、次の情報を残してください。
- 食べる前の写真、商品名や料理名
- おおよその量と、おかわりした量
- 残した場合は、残りの写真や量
- 飲み物の種類と飲んだ量
- 使った油、調味料、ドレッシング
- 間食や味見、食べた時刻
油、ご飯、シリアル、ナッツなど、目分量で判断しているものは、数回だけ実際に量ると普段の見積もりとの差が分かります。毎回量る必要はありません。
記録を始めると、食べる量が自然に変わる方もいます。変わったと感じたら、その点もメモしてください。外来で以前の食べ方を振り返るときの手がかりになります。
体重は同じ条件で測り、週単位で比べる
体重は、起床後にトイレを済ませてからなど、条件をなるべくそろえて測ります。無理なく毎日測れる場合は、1週間の平均を前の週と比べると、1日ごとの上下に振り回されにくくなります。
短期間の増減には、水分、便通、月経、塩分の多い食事なども関わります。数日で結論を出さず、数週間の推移と食事記録を照らし合わせます。
見落としに気づいたら、続けられる方法に変える
アプリや写真による記録にも誤差はあります。毎日ずっとカロリー計算を続ける必要はありません。見落としていたものが分かれば、その後は飲み物の本数や間食の回数など、確認する項目を絞る方法もあります。
食べることへの不安が強い方や、記録・体重測定が負担になる方は、無理に数字を追わず医療者に相談してください。食事を減らしすぎることの問題は、食事を減らしすぎると体重維持が難しくなる理由で説明しています。
外来では、食事記録に加えて、体重の推移、健診結果、お薬手帳があると経過を確認しやすくなります。受診前の準備は、ダイエット外来の初診で確認する項目をご覧ください。
富士市・富士宮市・沼津市周辺で、食事を減らしても体重が変わらず悩んでいる方は、普段の食事と体重の記録を持ってご相談ください。食べ方、活動量、薬や病気の影響を確認し、どこを調整するか一緒に考えます。
よくある質問(FAQ)
【参考文献】
- Lichtman SW, Pisarska K, Berman ER, et al. Discrepancy between self-reported and actual caloric intake and exercise in obese subjects. N Engl J Med. 1992;327(27):1893-1898. DOI:10.1056/NEJM199212313272701. PubMed
- Lissner L, Troiano RP, Midthune D, et al. OPEN about obesity: recovery biomarkers, dietary reporting errors and BMI. Int J Obes. 2007;31(6):956-961. DOI:10.1038/sj.ijo.0803527. PubMed
- Wehling H, Lusher J. People with a body mass index ≥30 under-report their dietary intake: a systematic review. J Health Psychol. 2019;24(14):2042-2059(オンライン先行公開2017年). DOI:10.1177/1359105317714318. PubMed
- National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases (NIDDK). Body Weight Planner. NIDDK公式サイト
- National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases (NIDDK). Eating & Physical Activity to Lose or Maintain Weight. NIDDK公式サイト
- Martin CK, Carmichael OT, Carnell S, et al. Tirzepatide on ingestive behavior in adults with overweight or obesity: a randomized 6-week phase 1 trial. Nat Med. 2025;31(9):3141-3150. DOI:10.1038/s41591-025-03774-9. PubMed
- 日本イーライリリー株式会社. マンジャロ皮下注アテオス 電子化された添付文書(2026年9月改訂 第11版). 日本イーライリリー 医療関係者向けサイト
- Nunes CL, Casanova N, Francisco R, et al. Does adaptive thermogenesis occur after weight loss in adults? A systematic review. Br J Nutr. 2022;127(3):451-469. DOI:10.1017/S0007114521001094. PubMed

