- ファスティングで体重が減ることはあるが、酵素そのものが脂肪を燃やすという十分な根拠はない
- 短期間の体重変化には、脂肪以外の水分やグリコーゲンの変化も含まれる
- 酵素ドリンクは名称ではなく、エネルギー量・糖質量・原材料を見て判断する
- 極端な食事制限では、栄養や筋肉量にも注意が必要になる
- リバウンドを繰り返す前に、体重が戻った理由を振り返ることが次につながる
「酵素ドリンクを使ったファスティングで体重が落ちたのに、しばらくして元に戻ってしまった」という相談は少なくありません。結論から言うと、ファスティングで体重が減ること自体はあります。ただしそれは主に、食べる量とエネルギー摂取が減ることによる変化です。健康な人が酵素ドリンクを飲むことで、酵素そのものが代謝を上げて脂肪を燃やしやすくするという十分な臨床的根拠は、現時点で確立していません。また、短期間で減った体重には、体脂肪だけでなく水分やグリコーゲン、消化管の内容物も含まれます。リバウンドしたからといって、代謝が壊れたと考える必要はありません。この記事では、酵素ドリンクの「酵素」という言葉が何を意味するのか、糖質量をどう見るか、そしてファスティングを繰り返さずに体重を維持する方法を医師の立場から解説します。
酵素ドリンクでファスティングすると、なぜ体重が落ちる?
食べる量・摂取エネルギーが減るのが基本
酵素ドリンクを使ったファスティングで体重が落ちる一番の理由は、単純です。食べる量が減り、摂取エネルギーが消費エネルギーを下回るためです。酵素ドリンクに特別な作用があるかどうかにかかわらず、固形物をとらずドリンクだけで過ごせば、1日の摂取エネルギーは大きく下がります。この収支がマイナスになれば、体重は動きます。
減った体重のすべてが体脂肪とは限らない
数日間のファスティングで体重計の数字が2〜3kg減ることは珍しくありません。ただし、この減少分をそのまま体脂肪の減少と考えるのは正確ではありません。体内に蓄えられた糖(グリコーゲン)とそれに伴う水分、消化管に残っていた内容物も、短期間の体重変化に関わります。エネルギー収支がマイナスであれば体脂肪も減りますが、数日間という短い期間では、体脂肪以外の要因が数字に占める割合が大きくなりやすいということです。
そもそも「酵素ドリンクの酵素で痩せる」は本当?
人の体内の酵素と、商品名としての「酵素」は分けて考える
酵素とは、体の中で起きる化学反応を助けるタンパク質のことです。食べ物を消化するときにも、栄養を代謝してエネルギーに変えるときにも、数えきれないほどの酵素が働いています。人の体は、これらの酵素を自分自身でつくり出しています。
一方、「酵素ドリンク」という商品名にある「酵素」は、果物や野菜を発酵させる過程でできた成分や、発酵に使われた酵母・微生物由来の成分を指していることが多く、体内で働く酵素とそのまま同じ意味で使われているわけではありません。ドリンクとして口から摂取した成分は、他の食品と同じようにまず消化管を通ります。タンパク質としての性質を持つ酵素は、消化の過程でアミノ酸やペプチドに分解されるのが通常の生理的な流れです。「胃酸で全部壊れるから意味がない」と単純に言い切ることはできませんが、口から摂取した酵素が、体内で働く酵素とそのまま同じ形で作用すると考えるのも、根拠としては飛躍があります。
消化酵素を補う治療と、健康な人のダイエット
医学の世界には、実際に酵素を薬として使う治療があります。慢性膵炎や膵臓の手術後など、膵臓からの消化酵素の分泌が不足している方に対して、消化酵素を薬として補う治療(膵酵素補充療法)です。これは、慢性膵炎や膵切除後などに伴う膵外分泌機能不全に対して行う治療です。健康な人が体重を落とす目的で市販の酵素ドリンクを飲むこととは、前提がまったく異なります。健康な人の場合、もともと必要な消化酵素は体内で十分につくられています。
商品を見るなら「酵素」より栄養成分表示
では、健康な人が酵素ドリンクを飲むことで、代謝が上がり脂肪が燃えやすくなるという主張には、どの程度の根拠があるのでしょうか。現時点では、健康な人を対象に、酵素ドリンクや酵素サプリメントの摂取が体脂肪の減少を促すことを示す質の高い臨床研究は確認されていません。「効果がないと証明されている」わけではなく、「効果を裏づける十分な根拠が今のところ確認されていない」というのが正確な言い方です。
この状況を踏まえると、「酵素」という言葉そのものに減量効果を期待するよりも、その商品に何がどれだけ含まれているかを見るほうが、実際の体重管理には役立ちます。次の章では、酵素ドリンクの中身をどう見ればよいかを具体的に説明します。
酵素ドリンクを飲んでいるのに、実は糖質を摂っていることもある
「健康そうな飲み物」と「低カロリー」は同じではない
「酵素」「発酵」「野菜・果物由来」といった言葉には、なんとなく体によさそうな印象があります。ただし、これらの言葉は健康的かどうかの印象を与えるものであり、エネルギー量や糖質量の少なさを保証するものではありません。同じ「酵素ドリンク」という名称の商品でも、原材料や製法によってエネルギー量や糖質量には幅があります。ある商品には果汁やシロップが多く使われ、別の商品には使われていない、というように、中身は製品ごとに異なります。「酵素ドリンクだから低カロリーだろう」という思い込みだけで選ぶと、想定より糖質やエネルギーを摂っていた、ということも起こり得ます。
エネルギー量・糖質量・原材料表示を見る
酵素ドリンクを選ぶときや、すでに使っているものを見直すときは、パッケージにある栄養成分表示を見る視点が役立ちます。着目したいのは主に3つです。
| 項目 | 見るところ |
|---|---|
| エネルギー | 1回量だけでなく、1日に飲む回数をかけた合計量で考える |
| 糖質・糖類 | 炭水化物と糖類の欄を見て、果汁・シロップ・砂糖類の使用有無を見る |
| 原材料表示 | 果汁、糖類、シロップなど何が使われているかは製品ごとに異なる |
※スマートフォンでは表を横にスクロールしてご覧いただけます。
置き換えファスティングとして酵素ドリンクを取り入れる場合の考え方は、酵素ドリンクを含む置き換えダイエットの考え方でも扱っています。1食を置き換える形で使うのか、数日間の断食中の栄養補助として使うのかによって、見るべきポイントは変わってきます。
果糖だけを悪者にしない
酵素ドリンクの原材料表示を見ていると、果糖ぶどう糖液糖という言葉を目にすることがあります。「果糖」という響きから、太りやすい成分だと決めつけたくなるかもしれません。ただ、果糖の代謝が体に与える影響は、摂取量や、飲み物として摂るのか固形の食品として摂るのか、1日の総エネルギー摂取量がどのくらいかによって変わってきます。果糖という成分単体を悪者にするより、糖類を含む飲み物をどのくらいの量、どのくらいの頻度で摂っているかという全体像で捉えるほうが、実際の体重管理には近道です。
ファスティング後に体重が戻りやすく感じるのはなぜ?
食事を戻すと水分やグリコーゲンも戻る
ファスティングを終えて食事を再開すると、数日のうちに体重が増えることがあります。これは、多くの場合、体脂肪が急に増えたわけではありません。ファスティング終了直後の数日程度で増える体重には、グリコーゲンや水分、消化管内容物の回復が含まれるため、増加分のすべてを体脂肪と考える必要はありません。
一方で、この戻りを数週間、数か月というスパンで見た場合は話が別です。摂取エネルギーが消費エネルギーを上回る状態が続けば、体脂肪は改めて増えていきます。「数日で戻った体重」と「数か月かけて増えた体脂肪」は、分けて考える必要があります。
「代謝が壊れた」と考える必要はない
ファスティング後にリバウンドすると、「代謝が壊れた」「痩せにくい体質になった」と感じる方は少なくありません。ただ、体重が戻る背景には、食欲の変化、活動量、体重減少に伴う消費エネルギーの低下など、複数の要因が関わっています。単純に「筋肉が減ったから代謝が落ちてリバウンドした」と言い切れるものではありません。ファスティングの方法や期間によっても、体への影響の出方は変わってきます。
極端なファスティングでは、筋肉を減らさない工夫も必要
体重だけでなく「何が減ったか」を見る
数日間、固形物をほとんど摂らないような強いファスティングでは、体重の減り方に注意が必要です。体重計の数字は脂肪と筋肉を区別してくれません。摂取エネルギーを大きく減らした状態が続くと、体脂肪だけでなく、筋肉などの除脂肪量(体重から体脂肪を除いた部分で、筋肉や水分、臓器などを含みます)も一緒に減ることがあります。ただし、これは「ファスティングをすれば必ず筋肉が減る」という単純な話ではありません。制限の強さ、期間、摂取するタンパク質の量、体を動かす頻度によって、体組成への影響は変わります。短期間で急激に体重を落とした場合の注意点は、急激な体重減少とリバウンドの関係で詳しく説明しています。
タンパク質と運動も減量の一部
酵素ドリンクだけで数日を過ごすようなファスティングでは、タンパク質の摂取量はかなり少なくなります。可能な範囲で、置き換えの回数を減らす、通常の食事にタンパク質を含む食品を残すなど、極端になりすぎない工夫が選択肢になります。筋肉を維持するには、極端な食事制限を避け、必要なタンパク質を摂ることに加えて、減量中も筋力トレーニングなどの筋肉への刺激を残すことが役立ちます。数日間ほとんど食べないような強いファスティング中に、無理に運動量を増やす必要はありません。減量後の運動の考え方については、痩せた後の運動とリバウンド予防で具体的に紹介しています。
ファスティング自体が悪いわけではない
時間制限食などの間欠的ファスティングは研究されている
ここまで、酵素ドリンクの「酵素」そのものへの期待には慎重になったほうがよいという話をしてきました。ただし、ファスティングという方法そのものを否定しているわけではありません。食べる時間を1日のうち一定の範囲に絞る時間制限食や、週のうち数日だけエネルギー摂取を大きく減らす方法などは、間欠的ファスティングと呼ばれ、肥満・過体重に対する減量方法の一つとして研究が進められています。現在のエビデンスでは、こうした方法が、毎日の食事量を一定に減らす持続的なエネルギー制限と比べて、減量効果が圧倒的に優れているとまでは言えません。方法によって体組成への影響も異なるため、「ファスティング」とひとくくりにせず、どの方法を試そうとしているのかを踏まえて考える必要があります。方法ごとの違いや、向いている人・向いていない人の判断基準は、ファスティングの種類と向き不向きで詳しくまとめています。
続けられない方法では体重維持が難しい
どのような減量方法であっても、続けられなければ、その後の体重を維持することは難しくなります。数日間のファスティングを繰り返しながら、そのたびに体重が戻ってしまうという状態が続いているなら、方法そのものが今の生活スタイルに合っていない可能性を考えてみる価値があります。
リバウンドを繰り返しているなら「もう一度食べない」から離れる
同じような酵素ファスティングを何度も試して、そのたびに体重が戻っているなら、次にまた同じ方法を繰り返す前に、いくつか具体的に振り返ってみたいことがあります。
前回のファスティングでは、何kg減って、それにどのくらいの期間がかかったか。終了後、最初の食事に何を選んだか。間食の回数は増えていないか。甘い飲み物やお酒を口にする頻度はどうか。夜遅い時間に食事をとる習慣が戻っていないか。歩く量や体を動かす機会は、ファスティング前後で変わったか。睡眠時間は足りているか。血圧や血糖の薬など、服用している薬はあるか。直近の健康診断で指摘された数値はあるか。
こうした項目を一つずつ見ていくと、「意志が弱かった」という一言では説明できない要因が見えてくることがあります。ファスティング終了後に急に食事量を戻したことで、以前より間食が増えていたというケースもあれば、仕事の繁忙期と重なって歩く機会が減っていたというケースもあります。体重が戻った理由は、人によって違います。何度も同じ方法で減量と増量を繰り返している場合、リバウンドしやすい人に共通する生活習慣のパターンを知っておくことも役立ちます。リバウンドしやすい人に見られる食事や生活習慣の特徴にまとめていますので、当てはまる項目がないか見てみてください。
また、「なぜ食べなければ体重が減り、食べ始めると戻るのか」という体の仕組みそのものについては、体重セットポイントという考え方も参考になります。痩せても体重が戻る理由・体重セットポイントという考え方で解説しています。
医療ダイエットも「食べなくてよくなる方法」ではない
マンジャロ・リベルサスでも食事量は減る
酵素ドリンクによるファスティングを繰り返してもうまくいかなかった方の中には、マンジャロやリベルサスといった薬を使った医療ダイエットに関心を持つ方もいます。これらはGLP-1受容体などに作用する薬で、食欲を抑え、食事量を減らす効果があります。マンジャロ(チルゼパチド)、リベルサス(セマグルチド)は、日本国内では2型糖尿病の治療薬として承認されており、減量を目的とした自由診療での使用は、国内の承認された効能・効果の範囲外(適応外)にあたります。同じ有効成分を含み、肥満症治療薬として国内承認されている薬(ゼップバウンド、ウゴービなど)とは、承認の位置づけが異なります。
すでに糖尿病治療でインスリン、SU薬、グリニド薬などを使用している方が、自己判断で食事を大きく減らしたり長時間の絶食を行ったりすると、低血糖のリスクが高まります。薬の種類や量を自己判断で変更してはいけません。ファスティングを検討している場合も、治療中の薬がある方は、必ず処方医に相談してください。
薬を使っていても栄養と筋肉には注意する
マンジャロやリベルサスを使うと、食欲そのものが落ち着き、自然と食事量が減ることがよくあります。これは、酵素ドリンクを使った置き換えファスティングと同様に、摂取エネルギーが減るという点では共通しています。食事量が減った状態が続くと、必要なタンパク質やその他の栄養素が不足しやすくなり、筋肉などの除脂肪量が減ることもあります。吐き気や下痢などの消化器症状が出た場合、水分や食事がとりにくくなり、脱水につながることもあるため、体調の変化は診察のたびに医師へ伝えてください。
薬をやめた後まで考えて減量する
マンジャロやリベルサスも、使っている間だけ体重が落ち着いて、やめた後にまた食欲が戻り、体重が増えるケースがあります。マンジャロやリベルサスによる減量でも、治療終了後に食欲が戻り、体重が再び増えることがあります。そのため、薬を使用している期間から、治療終了後にも続けられる食事や運動を考えておく必要があります。マンジャロを中止した後の体重変化についてはマンジャロ中止後のリバウンドと対策、リベルサスについてはリベルサス中止後に体重を戻さないための対策で、それぞれ詳しく説明しています。薬を使った減量そのものについて詳しく知りたい方は、マンジャロによる治療の効果と副作用やリベルサスとマンジャロの違いもあわせてご覧ください。
ファスティング後のリバウンドを相談したい方へ
同じようなファスティングを繰り返しながら、そのたびに体重が戻ってしまっている場合や、健康診断で血糖・脂質・血圧のいずれかについて指摘を受けている場合、糖尿病や高血圧などですでに治療中の場合は、自己流での食事制限を続ける前に、医療機関へ相談するという選択肢があります。
ダイエット外来では、医師が既往歴や服用中の薬を聞いたうえで、健康診断の結果を診療の参考にします。必要に応じて血液検査を行い、体の状態を踏まえたうえで、食事や運動の見直し、場合によっては薬を使った治療を組み合わせて提案します。薬を使う場合も、使っている間の栄養や体調の変化を診察で見ながら進め、治療を終えた後にどう体重を維持するかまで含めて考えます。
ファスティングによるリバウンド以外の要因も含めて、リバウンド全般について知りたい方は、リバウンドが起きる仕組みと当院の考え方もあわせてご覧ください。
富士市・富士宮市・沼津市周辺で、酵素ファスティング後のリバウンドや、マンジャロ・リベルサスを使った医療ダイエットについて相談先を探している方は、地域向けの案内ページもあわせてご覧ください。富士市・富士宮市にお住まいの方は富士市・富士宮市での医療ダイエットの案内、沼津市にお住まいの方は沼津市でのメディカルダイエットの選び方をご参照ください。
よくある質問(FAQ)
【参考文献】
- 日本イーライリリー株式会社.マンジャロ皮下注 電子添付文書(2型糖尿病、2026年5月改訂第10版).
- ノボ ノルディスクファーマ株式会社.リベルサス錠 電子添付文書(効能又は効果:2型糖尿病/効能又は効果に関連する注意).
- 日本イーライリリー株式会社.ゼップバウンド皮下注(肥満症)最適使用推進ガイドライン関連情報.
- Cahill GF Jr. Fuel metabolism in starvation. Annu Rev Nutr. 2006;26:1-22.
- Tinsley GM, La Bounty PM. Effects of intermittent fasting on body composition and clinical health markers in humans. Nutr Rev. 2015;73(10):661-674.
- Cioffi I, et al. Intermittent versus continuous energy restriction on weight loss and cardiometabolic outcomes: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. J Transl Med. 2018;16(1):371.
- Harris L, et al. Intermittent fasting interventions for treatment of overweight and obesity in adults. JBI Database System Rev Implement Rep. 2018;16(2):507-547.
- Albosta M, Bakke J. Intermittent fasting: is there a role in the treatment of diabetes? A review of the literature and guide for primary care physicians. Clin Diabetes Endocrinol. 2021;7(1):3.
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- Malik VS, et al. Sugar-sweetened beverages and risk of metabolic syndrome and type 2 diabetes: a meta-analysis. Diabetes Care. 2010;33(11):2477-2483.
- 日本肥満学会『肥満症診療ガイドライン2022』(ライフサイエンス出版)
- 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告

