肝機能・腎機能が悪くても医療ダイエットはできる?血液検査で状態を確認する理由

  • 肝機能や腎機能に異常があっても、医療ダイエットを検討できる場合があります
  • 使用できるかどうかは、異常の原因と程度を調べたうえで判断します
  • 代謝機能障害に関連する脂肪性肝疾患では、減量と運動が治療の基本になります
  • 嘔吐や下痢による脱水は、腎機能を悪化させることがあります
  • 血液検査は、その人に合った治療方法を選ぶために行います

健康診断で肝機能や腎機能の数値に印がつき、マンジャロやリベルサスに関心があっても「自分は対象外かもしれない」と感じている方をよく見かけます。結論からいうと、肝機能や腎機能に異常があるというだけで、医療ダイエットの対象から一律に外れるわけではありません。ただし、その数値がなぜ悪くなっているのか、原因と程度を調べずに薬だけを始めることはできません。この記事では、肝臓の数値が示す意味、腎臓の働きと脱水の関係、血液検査で何を確認しているのかを、健康診断の結果を手元に置きながら読める形で整理します。

目次

肝機能・腎機能が悪くても、医療ダイエットを検討できる場合があります

まず、多くの方が知りたい結論からお伝えします。

検査値だけで薬の使用可否は決まりません

AST、ALT、クレアチニン、eGFRといった数値に異常があっても、それだけで治療の対象から外れるわけではありません。数値の異常には、軽い脂肪肝によるものから、専門的な精査が必要な病気まで、幅があります。同じ「異常値」という言葉でも、中身はまったく違います。

異常の原因と現在の体調を見ます

診察では、数値がいつから、どの程度悪いのか、症状はあるか、これまでにかかった病気は何か、現在服用している薬は何かを確認します。原因によっては、体重管理より先に詳しい検査や基礎疾患の治療を優先する場合があります。また、薬を使わない食事指導や運動指導による体重管理を選ぶ方もいます。「使えるか使えないか」の二択ではなく、その人の状態に応じた選択肢がいくつも存在します。

生活習慣病の薬と体重管理にあるとおり、体重管理と持病の治療は切り離して考えるものではなく、同じ診察の中で一緒に確認していく内容です。

肥満に関連する肝機能異常は、減量で改善を目指せます

肝機能の数値が高いと聞くと、多くの方が「肝炎」という言葉を思い浮かべます。しかし、肝機能異常の原因は一つではありません。

脂肪性肝疾患と内臓脂肪の関係

肥満や内臓脂肪の蓄積、インスリン抵抗性に関連して肝臓に脂肪がたまる病気は、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)と呼ばれています。以前はNAFLDと呼ばれていた病気です。健康診断で「脂肪肝」を指摘された方の多くが、この範囲に含まれます。

代謝機能障害に関連する脂肪性肝疾患では、食事と運動の見直し、適切な減量が治療の基本です。体重が減ると、肝臓にたまった脂肪やAST・ALTの数値は改善します。ただし、改善の程度には個人差があります。

すべての肝炎を減量だけで治療できるわけではありません

MASLDのうち、肝臓に脂肪がたまるだけでなく、肝細胞の障害や炎症を伴う状態を、代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)と呼びます。線維化が進むと、肝硬変や肝がんのリスクが高くなるため、進行度の評価が必要です。

一方、肝機能異常の原因が、ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎、薬剤性肝障害、アルコール関連肝疾患、胆道系の病気であれば、話はまったく別です。これらは減量だけでは治療できません。それぞれに応じた検査と治療が必要です。肝機能値が改善したことと、肝臓の線維化そのものが改善したことは、同じ意味ではありません。数値の動きだけで安心も油断もしない、という姿勢が現実的です。

AST・ALT・γ-GTPだけでは原因を決められません

ASTとALTは、肝臓の機能そのものを直接示す数値ではありません。肝細胞が傷ついたときに血液中へ漏れ出す酵素で、肝細胞障害の手がかりになる検査です。数値が上がる原因は、脂肪性肝疾患に限りません。ウイルス、アルコール、薬剤、自己免疫の病気でも同様に上がります。

また、AST・ALTが正常だからといって、肝臓に問題がないとは言い切れません。進行した肝線維化や肝硬変があっても、AST・ALTが正常範囲にとどまることがあります。ビリルビン、アルブミン、血小板数、腹部超音波などの画像検査が、あわせて判断材料になります。γ-GTPについても、飲酒だけが原因とは限らず、脂肪肝や胆道系の状態、一部の薬剤の影響でも上昇します。

腎機能が低下している人は、脱水に注意が必要です

腎臓については、数値の意味だけでなく、治療中に起こりうる変化への理解が欠かせません。

eGFRとクレアチニンは腎臓の状態を知る目安です

クレアチニンは筋肉から作られる老廃物で、腎臓から排泄されます。この値と年齢、性別から計算した推算値がeGFR(推算糸球体濾過量)です。eGFRはあくまで推算値であり、実測したものではありません。クレアチニンは筋肉量の影響を受けるため、高齢の方や筋肉量が少ない方では、実際の腎機能より高く評価されることがあります。実際に90歳の寝たきりのおばあちゃんの腎機能が私たちより遥かに高く推計されることがありますが、もちろんそれは正確ではありません。

慢性腎臓病(CKD)は、eGFRを1回測って低かったことだけで診断される病気ではありません。尿蛋白や血尿などの腎障害を示す所見、またはeGFRの低下が3か月以上続くことで診断されます。健康診断で一度eGFRが低かったからといって、それだけで重い腎臓病と決めつける必要はありません。次の健康診断や再検査の結果とあわせて見ていくことになります。

吐き気や下痢が腎機能悪化につながる流れ

マンジャロやリベルサスの添付文書には、下痢や嘔吐から脱水を続発し、急性腎障害に至るおそれがあると明記されています。これは、薬が直接腎臓を傷つけるという意味ではありません。悪心や嘔吐、下痢、食欲低下によって食事や水分を十分に取れなくなり、体内の水分が不足し、腎臓へ流れる血液の量が減ることで、腎機能が急に悪化する場合がある、という流れです。

短期間で急激に体重が減ったときは、その中に水分の減少が含まれている可能性があります。体重の数字だけを見て「効果が出ている」と喜ぶ前に、食事や水分をきちんと取れているかを確認することが必要です。利尿薬、ACE阻害薬、ARB、SGLT2阻害薬、NSAIDsなどを使用している方は、体調不良時にどう対応するかを、処方医とあらかじめ確認しておくと安心です。降圧薬とマンジャロ・リベルサスを併用するときの注意点でも、脱水と血圧の変化について扱っています。

慢性腎臓病では自己流の高たんぱく食を避けます

ダイエットの情報として、高たんぱく食や糖質制限が広く紹介されています。しかし、慢性腎臓病がある方に、これらを一律に勧めることはできません。CKDの重症度、尿蛋白の程度、年齢、筋肉量の状態(サルコペニアのリスク)によって、適したたんぱく質量やエネルギー量は異なります。自己判断で極端な高たんぱく食や糖質制限を始めてはいけません。食事内容を調整する場合は、腎臓の状態を踏まえたうえで、医師や管理栄養士と相談しながら進める必要があります。

マンジャロ・リベルサスを始める前に見る項目

肝臓・腎臓に関する内容以外にも、治療を始める前に確認しておきたい点があります。薬そのものの詳しい効果や副作用の一覧は、マンジャロの効果・副作用・使用上の注意リベルサスとマンジャロの違いにまとめていますので、ここでは確認事項に絞って説明します。

肝臓・腎臓以外の病気や服用薬も見ます

急性膵炎、胆石症・胆嚢炎・胆管炎・胆汁うっ滞性黄疸、重度の胃腸障害、腸閉塞を含むイレウスは、いずれもマンジャロ・リベルサスの添付文書で注意が呼びかけられている病態です。膵炎や胆石の既往、腹部手術の既往、重い消化器症状がある方は、使用前に必ず医師へ伝えてください。糖尿病治療薬を服用している方は、低血糖のリスクについても確認が必要です。複数の薬を飲んでいてもダイエット外来を受診できる?にあるとおり、お薬手帳、市販薬、漢方薬、サプリメントも含めて、使用しているものはすべて伝えてください。申告の漏れは、判断の精度を下げます。

胃腸症状を我慢してはいけません

吐き気や下痢が続いているのに、我慢して治療を続けてはいけません。食事や水分を十分に取れない状態が続く場合は、自己判断で様子を見ず、処方元へ連絡してください。「薬が効いている証拠」と食欲低下を前向きに捉えることは、脱水や栄養不足のリスクを見逃すことにつながります。

体重管理目的の使用は自由診療です

マンジャロとリベルサスは、日本では2型糖尿病治療薬として承認されています。糖尿病ではない方が体重管理の目的で使用する場合は、承認された効能・効果の範囲を超えた適応外使用にあたります。適応外使用は自由診療として扱われ、公的医療保険は適用されません。また、適応外使用による副作用は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象になりません。この点は、治療を検討するうえで正確に理解しておく必要があります。

血液検査では何を調べるのか

肝臓・腎臓の状態を確認するために、血液検査ではいくつかの項目を組み合わせて見ています。何を目的に調べているのかを知っておくと、検査結果を受け取ったときに理解しやすくなります。

肝臓に関連する項目

AST・ALTは肝細胞の障害を、γ-GTP・ALPは胆道系への負担を反映しやすい項目です。アルブミンやPT-INRは、肝臓が蛋白質や凝固因子を作る働きの目安になります。ビリルビンは肝臓から胆汁へ排泄する働きなどを反映します。血小板数の低下は、肝線維化や門脈圧亢進を疑う手がかりになる場合があります。

腎臓に関連する項目

クレアチニン・eGFRは腎臓のろ過機能の目安、ナトリウム・カリウムは体液や電解質のバランスを示します。尿蛋白・尿アルブミンは、腎臓そのものへのダメージを示す指標として、eGFRとあわせて評価されます。

血糖や脂質も一緒に調べる理由

肝機能・腎機能とあわせて血糖やHbA1c、LDLコレステロール、中性脂肪を確認するのは、これらが互いに関連しているためです。脂肪肝は血糖や脂質の異常と併存しやすく、スタチン・フィブラートとダイエット薬の併用にあるように、脂質異常症の薬を服用している方では、その薬の種類も判断材料になります。

検査項目 主に見ること 知っておきたい点
AST・ALT 肝細胞の障害 数値だけでは原因を決められません
γ-GTP・ALP 胆道系への負担 飲酒だけが原因とは限りません
ビリルビン・アルブミン・血小板 肝臓の合成能や進行度 肝硬変の評価にも用いられます
クレアチニン・eGFR 腎臓のろ過機能 eGFRは推算値で、筋肉量の影響を受けます
ナトリウム・カリウム 体液・電解質のバランス 脱水や薬の影響で変動します
尿蛋白・尿アルブミン 腎臓そのものへのダメージ eGFRとあわせて評価します
血糖・HbA1c 血糖コントロールの状態 脂肪肝や腎機能とも関連します
LDLコレステロール・中性脂肪 脂質の状態 服用中の薬の種類も判断材料になります

※スマートフォンでは表を横にスクロールしてご覧いただけます。

これらの検査結果だけで、処方の可否や治療の安全性が自動的に決まるわけではありません。診察で確認した症状や既往歴とあわせて、総合的に判断します。

治療を始めた後も体調と検査値を見ます

血液検査は、治療を始める前だけの手続きではありません。

検査の間隔は一律ではありません

検査を行う時期は、基礎疾患の有無、これまでの数値、現在の症状、併用している薬によって異なります。全員が同じスケジュールで検査を受けるわけではなく、その人の状態に応じて調整されます。

開始直後と増量後は胃腸症状に注意します

投与を開始した直後や増量した後は、悪心、嘔吐、下痢が出やすい時期です。この時期は特に、食事量と水分摂取量を意識してください。食べられない状態を「薬が効いている」と前向きに捉えてはいけません。水分を取れない状態が続く場合は、処方した医療機関へ連絡してください。

体重が減っても薬を自己調整してはいけません

体重が減ってきたことで、降圧薬、糖尿病薬、利尿薬などの持病の薬を自己判断で減らしたり、中止したりしてはいけません。数値が改善して見えても、薬の効果によって保たれている状態である場合があります。体重減少にともなう薬の調整は、処方した医師と相談しながら行うものです。ダイエットしたら血圧・血糖・コレステロールの薬は減らせる?でも、この点を詳しく扱っています。

ダイエットより肝臓・腎臓の評価を優先する症状

次のような症状や経過があるときは、体重管理より先に、肝臓・腎臓の評価を受けたほうがよい場合があります。症状の強さや経過によって緊急度は異なり、程度によっては次の予約を待たず、救急受診が必要になることもあります。

肝臓・胆道系の病気を疑う症状

白目や皮膚が黄色い、尿の色が濃い、便が白っぽい、右上腹部の強い痛みが続く、発熱をともなう腹痛がある。こうした症状は、肝臓や胆道の病気を疑うサインです。

脱水や腎機能悪化を疑う症状

水分を十分に取れない、嘔吐や下痢が続いている、尿量が明らかに減った、立ちくらみや強い脱力感がある、むくみや息苦しさが急に強くなった。これらは、脱水や急性腎障害を疑う症状です。

早めに医療機関へ相談すべき検査結果や既往

肝炎ウイルス陽性、肝硬変、透析、腎移植の既往がある方、急激なeGFR低下、高度な肝機能異常、ビリルビン高値、血小板やアルブミンの低下、尿蛋白や血尿を指摘されている方は、体重管理の相談より前に、専門的な評価が必要になる場合があります。

富士市・富士宮市・沼津市周辺で相談を検討している方へ

肝機能や腎機能の数値が気になったまま検索を続けるより、検査結果を持って相談したほうが、状況が具体的に見えてくることがあります。

健診結果とお薬手帳を持参してください

直近の健康診断結果や、他院で受けた血液検査結果があれば、持参してください。検査項目や検査を受けた時期によっては、参考資料として活用できますが、必要であればあらためて血液検査を行います。お薬手帳、または服用中の市販薬・漢方薬・サプリメントがわかるものも準備しておくと、診察がスムーズです。

持病の治療を続けながら相談できます

肝臓病や腎臓病を他院で治療している場合、その治療をやめる必要はありません。必要に応じて、かかりつけ医や専門医との情報共有を検討することもあります。薬を使う治療だけでなく、薬を使わない体重管理も選択肢に含めて相談できます。富士市、富士宮市、沼津市周辺で医療ダイエットを検討している方は、こうした準備をしたうえで受診すると、現在の状態に合った選択肢を話し合いやすくなります。

実際、当院のダイエット外来には、生活習慣病だけでなく、関節リウマチや高度の貧血など、持病をお持ちの患者さんも多くお越しになります。お薬の調整など慎重な管理が求められる場面も少なくありません。

だからこそ、持病のある方や体調に不安がある方にこそ、美容クリニックではなく、持病の診療も行える医療機関でのダイエット治療が必要であると強く実感しています。

まとめ

  • 肝機能や腎機能の数値異常だけで、治療の可否は決まりません
  • 代謝機能障害に関連する脂肪性肝疾患(MASLD)では、減量と運動が治療の基本になります
  • 肝機能異常の原因がウイルス性肝炎や自己免疫性肝炎などであれば、減量だけでは治療できません
  • 嘔吐や下痢による脱水は、腎機能を悪化させます
  • 血液検査と診察の結果から、その人に合った治療方法を決めます
  • 処方薬を自己判断で中止してはいけません

健康診断で肝機能や腎機能の異常を指摘された方は、検査結果とお薬手帳を持参すると、現在の状態に合った体重管理を相談しやすくなります。

よくある質問(FAQ)

ASTやALTが高いと、マンジャロやリベルサスは使えませんか?

AST・ALTが高いというだけで、一律に使用できないと決まっているわけではありません。数値が上がった原因と程度を調べたうえで、使用できるかどうかを判断します。代謝機能障害に関連する脂肪性肝疾患以外の病気が疑われる場合は、その評価を先に行うことがあります。独自の数値基準で線引きすることはできません。

脂肪肝は痩せれば改善しますか?

代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)では、減量と運動が治療の基本です。体重が減ると、肝臓にたまった脂肪やAST・ALTの数値は改善します。ただし改善の程度には個人差があり、炎症や線維化が進んでいる場合は別の評価が必要になります。ウイルス性肝炎など他の原因による肝機能異常には、そのまま当てはまりません。

eGFRが低くてもマンジャロを使えますか?

eGFRが低いというだけで、使用できないと一律に決まっているわけではありません。マンジャロの添付文書は、腎機能障害を理由とした一律の使用制限を定めていません。ただし、脱水になりやすい状態や尿蛋白の有無、体全体の状態を踏まえた判断が必要です。透析を受けている方や高度な腎機能障害がある方は、より専門的な評価が求められます。処方を保証するものではありません。

健康診断の結果を持参すれば、血液検査は不要ですか?

直近の健康診断結果は、状態を把握する材料になります。ただし、検査項目や検査を受けた時期、その後の体調の変化によっては、あらためて血液検査を行うことがあります。持参いただくことで、診察はスムーズに進みやすくなります。

慢性腎臓病があっても高たんぱく食をしてよいですか?

慢性腎臓病の重症度や栄養状態によって、適した食事内容は異なります。一律に高たんぱく食を勧めることはできません。極端な糖質制限も、自己判断で始めるべきではありません。筋肉量の低下(サルコペニア)を防ぐ観点とのバランスも必要になるため、担当医と相談しながら決めてください。

【参考文献】
  1. 日本イーライリリー株式会社「マンジャロ(チルゼパチド)電子化された添付文書」(2026年5月改訂 第10版)
  2. 日本イーライリリー株式会社「マンジャロ 医薬品インタビューフォーム」(2026年6月改訂 第11版)
  3. ノボ ノルディスクファーマ株式会社「リベルサス錠 電子化された添付文書」
  4. 日本消化器病学会・日本肝臓学会「脂肪性肝疾患の日本語病名に関して」(2024年8月発表)
  5. 日本消化器病学会・日本肝臓学会「MASLD診療ガイドライン」(2026年4月改訂 第3版)
  6. 日本腎臓学会編「CKD診療ガイド2024」東京医学社
  7. 日本腎臓学会編「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」
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