- マンジャロを使った人全員の運動能力が落ちるわけではありません
- 食事量、消化器症状、脱水、低血糖、減量の速さが関係することがあります
- 除脂肪量が減ったことだけで、筋力が落ちたとは判断できません
- 体重が減っていても、運動や日常生活に支障が出る不調はそのままにしないでください
- 用量は自己判断で変えず、症状が続く場合は処方医に相談してください
マンジャロを使い始めてから、以前より運動で力が入らないと感じる方がいます。ただし、これは薬を使った人全員に起こる変化ではありません。食事量の減少や消化器症状、脱水、低血糖、急な体重減少が重なると、運動中の体感が変わることがあります。反対に、体重が減ったことで歩行や自重運動が楽になる方もいます。
マンジャロを使っても全員の運動能力が落ちるわけではありません
マンジャロ(一般名:チルゼパチド)は、GIP/GLP-1受容体作動薬です。日本で承認されている効能・効果は2型糖尿病であり、減量目的の使用は適応外となります。なお、同じ有効成分のゼップバウンドは肥満症について承認されていますが、対象となる患者さんの条件や用法が定められており、マンジャロの適応外使用と同じ扱いではありません。チルゼパチドが運動能力を直接低下させると確立した臨床試験はなく、開始後や増量後の不調を薬の作用だけで説明することはできません。マンジャロの作用と主な副作用もあわせてご覧ください。
運動パフォーマンスは、筋力、持久力、運動中の体感という異なる要素に分けて考えると整理しやすくなります。扱える重量が落ちたのか、途中で息が切れやすくなったのか、それとも「なんとなくだるい」という感覚なのかによって、確認すべき点は変わります。
体重が減ることで、歩行や階段、自重を使った運動が楽になる方もいます。同じ重量を持ち上げる力を絶対筋力、体重で補正した値を相対筋力と呼びます。絶対筋力が変わらなくても、体重が減れば相対筋力は上がるため、以前より動きやすく感じることがあります。
マンジャロ使用中に力が出にくいときは、食事不足、消化器症状、脱水、低血糖、血圧低下、体重減少の速度などを分けて考えます。
マンジャロ使用中に力が出にくくなる5つの原因
食事量が減り、運動に使うエネルギーまで不足している
食欲が落ちると、総摂取エネルギーだけでなく、運動に使う糖質の摂取量まで減ってしまうことがあります。筋トレのような高強度の運動や、ダッシュ、長時間の有酸素運動では、筋肉や肝臓に蓄えられた糖質であるグリコーゲンが不足すると、力が入りにくく感じられることがあります。
食べる量が減るほど薬がよく効いている、という考え方は正確ではありません。運動を続けたい場合は、体重を落とす目的と運動のためのエネルギーを両立させる工夫が必要です。グリコーゲン不足だけに原因を絞り込むのも早計で、消化器症状や脱水が同時に起きているケースも少なくありません。
吐き気や胃もたれで、運動前後に食べにくくなっている
チルゼパチドには胃内容排出を遅らせる作用があり、悪心や胃もたれ、腹部膨満感などが生じることがあります。電子添文にも、悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、消化不良、食欲減退などが副作用として記載されています。
こうした症状があると、運動前後に食事や水分をとりにくくなります。力が入りにくくなった時期と、薬を始めた時期や増量した時期を記録しておくと、診察で時間的な関係を整理できます。注射当日に一律で運動を控える必要はありませんが、吐き気やだるさがある日は強度を下げてください。
水分不足や消化器症状によって脱水気味になっている
食事量が減ると、食べ物からとっていた水分も減ります。そこに嘔吐や下痢、発汗、気温の高い環境が重なると、脱水を起こしやすくなります。電子添文には、低血圧・血圧低下・心拍数増加も副作用として記載されています。ただし、これらがすべて脱水によって起こるわけではありません。
口の渇き、尿量の減少、濃い色の尿、立ちくらみ、動悸などは脱水を疑う症状です。ただし、高血圧や心疾患、腎疾患で水分・塩分の制限を受けている方は、自己判断で摂取量を増やさず、運動時の補給方法を処方医に相談してください。
低血糖、血圧低下などを区別する必要がある
運動中のふらつきや脱力感は低血糖によるものと考えられがちですが、実際には脱水や血圧の低下、貧血、単純な摂取不足など、複数の原因が候補になります。低血糖では、冷や汗、動悸、手の震え、強い空腹感などが典型的な症状です。
マンジャロ単独での低血糖リスクは比較的低いものの、インスリン製剤やSU薬などを併用している場合は注意が必要です。糖尿病治療を受けている方は、運動時に低血糖が疑われた場合の対応を、あらかじめ主治医と相談しておきましょう。ふらつきや脱力が繰り返すときは、低血糖だけでなく脱水や血圧低下、貧血、食事不足も検討します。
急速な減量に伴い、除脂肪量が減っている
大幅な減量では、脂肪量とともにlean massも一定程度減少します。SURMOUNT-1試験のDXAサブ解析では、160人を対象に72週時点の体組成が調べられ、チルゼパチド群では体重が21.3%、脂肪量が33.9%、lean massが10.9%減少しました。減少した体重の約75%が脂肪量、約25%がlean massに相当します。
この研究で測定されたlean massは、骨格筋量そのものではありません。骨格筋のほか、臓器や体内水分などを含む指標で、骨塩量は除かれています。また、この解析では筋力や運動能力を直接測定していません。SURMOUNT-1全体では、参加者が回答した身体機能スコアは改善しており、lean massの減少だけからチルゼパチドが一律に身体機能を低下させるとは判断できません。急速な減量で筋肉や体調に影響が出る理由と、減量中に骨と筋肉を守る考え方も参考にしてください。
筋トレと有酸素運動では、現れやすい不調が少し違います
筋トレでは重量・回数・回復の変化を見る
筋トレで力が出ないと感じたとき、確認しやすいポイントには、扱える重量、反復できる回数、セットとセットの間の回復の早さ、翌日以降の筋肉痛の出方、フォームが崩れていないかなどがあります。これらは筋肉量そのものの変化だけでなく、摂取エネルギー、糖質量、水分、睡眠、休養の状態によっても左右されます。
重量が落ちても、それだけで筋肉量が大きく減ったとは判断できません。数週間の記録を見比べ、重量や回数の低下が続いているのか、体調による一時的な変化なのかを分けて考えます。
有酸素運動では息切れ・心拍・脱水に注意する
有酸素運動の場合は、同じ速度で走ったときの自覚的なきつさ、心拍数、続けられる時間、気温と発汗の量、運動前後の胃もたれや吐き気、食事から運動までの間隔などが手がかりになります。
以前より息が上がりやすい場合は、体力低下だけでなく、脱水や食事不足も考えます。筋トレと有酸素運動のどちらが悪いという話ではなく、運動の種類によって注意したい変化が異なります。
体重が減ることで運動しやすくなる面もあります
体を支える負担が減り、動きやすくなることがある
体重が減ると、歩行や階段の昇り降り、自分の体重を使う運動での負担が軽くなる方がいます。膝や腰にかかる負担が減ることで、これまでより長く歩けるようになったり、活動量そのものが増えたりするケースもあります。こうした変化には個人差があり、全員に同じように当てはまるわけではありません。
筋肉の大きさと筋力・身体機能は同じではない
体重、lean mass、筋力、心肺機能は別の指標です。lean massが減っても筋力が保たれる場合があり、反対に食事不足や疲労によって、筋肉量が大きく変わらなくても力が出にくいことがあります。絶対筋力と相対筋力を分けて考えると、体感の変化を整理しやすくなります。
マンジャロとは異なるGLP-1受容体作動薬のリラグルチドを対象とした研究では、薬剤だけを使用した群と比べ、運動を組み合わせた群で階段昇降能力や心肺体力が改善しました。絶対筋力には明確な低下がみられませんでした。ただし、チルゼパチドで同じ結果が確認されたものではなく、運動によってlean massの減少を完全に防げると証明した研究でもありません。減量後の体づくりについてはリバウンド予防としての筋トレで取り上げています。
力が出ないとき、薬を変える前に確認したいこと
注射日・食事・運動・症状を簡単に記録する
原因を切り分けるには、日々の記録が役立ちます。注射した日と用量、増量した日、行った運動の種類・時間・重量・回数、運動前後に食べたもの、消化器症状の有無、水分摂取量と尿の様子、めまいや冷や汗、動悸の有無、睡眠時間、体重が減っているペースなどを簡単にでも書き留めておくと、診察の際に状況を伝えやすくなります。
食事と水分を削りすぎていないか見直す
体重を落とすために、食事、水分、糖質を減らしすぎていないか振り返ってみてください。必要な食事量は、体格、運動量、持病によって異なります。腎疾患のある方への一律の高タンパク食や、高血圧・心疾患・腎疾患のある方への一律の塩分補給は適切ではありません。持病がある方は、食事や水分の調整を処方医や管理栄養士に相談してください。
一時的に運動強度を下げる選択もある
体調が優れない日に、無理をして自己ベストを狙う必要はありません。十分に食べられていない状態では、運動時間を短くするか、強度を一段階下げてください。増量後に不調が続く場合は処方医に連絡し、用量や投与間隔を自己判断で変更しないでください。
体重が減っていても、運動や日常生活に支障が出る状態を、薬がよく効いているとは評価しません。
運動を中止して、早めに受診したい症状
救急受診を考える症状
次の症状がある場合は、当院の通常予約を待たず、119番を要請するなど直ちに救急受診してください。
- 意識を失った、または呼びかけへの反応が悪い
- 強い胸の痛みがある
- 安静にしていても治まらない強い息苦しさがある
- 体の片側に力が入らない、ろれつが回らない
- 重い低血糖が疑われ、自分で糖質をとれない
処方医へ早めに相談する症状
次の症状がある場合は、次回予約を待たずに処方医へ連絡してください。
- 嘔吐や下痢を繰り返している
- 水分がほとんどとれない、または尿量が明らかに減っている
- 背中に広がるような強い上腹部痛や、嘔吐を伴う腹痛が続く
- 冷や汗、震え、動悸を繰り返す
- 運動時だけでなく、日常生活でも力が入らない
- 体重が急速に減り、強い倦怠感がある
- 増量後から不調が続いている
これらの症状だけで重い副作用と決まるわけではありませんが、自己判断で様子を見続けず、原因を調べる必要があります。
診察や血液検査で確認できること
血液検査だけでなく、経過と併用薬を確認する
診察では、マンジャロを始めた時期や用量、増量した時期、併用している糖尿病薬・降圧薬・利尿薬など、運動の内容と症状が出るタイミング、食事量と水分摂取、消化器症状、血圧と脈拍、体重が減っているペース、既往歴などを確認します。当院が体重以外に確認していることも参考にしてください。
症状に応じて検査項目を選ぶ
症状や経過に応じて、血糖やHbA1c、腎機能、ナトリウムやカリウムなどの電解質、血算、鉄やフェリチン、肝機能、甲状腺機能、強い筋肉痛や筋力低下がある場合のCK(筋肉の酵素)などを検討します。全員に同じ検査を一律に行うわけではありません。だるさや疲れやすさの背景に鉄欠乏性貧血が隠れている場合もあります。
血液検査だけで原因が分かるとは限りません。検査結果に、これまでの経過、食事内容、併用薬、症状を合わせて判断します。詳しい検査項目はダイエット外来で確認する血液検査をご覧ください。
| 考えられる要因 | 現れやすい変化 | 振り返る項目 |
|---|---|---|
| 食事量・糖質の減少 | 筋トレの回数が続かない、高強度の運動で力が出にくい | 運動前後の食事内容、以前からの食事量の変化 |
| 吐き気・胃もたれ | 運動前後に食事や水分をとりにくい | 症状が出る時間帯、開始・増量時期との関係 |
| 脱水 | 立ちくらみ、動悸、運動を続けにくい | 口の渇き、尿量・尿の色、発汗量、水分摂取量 |
| 低血糖・血圧低下 | ふらつき、冷や汗、震え、強いだるさ | 併用薬、食事との間隔、症状が出た時間 |
| lean massや筋力の変化 | 筋トレの重量や回数の低下が数週間続く | 体重減少の速度、食事量、運動記録、睡眠・休養 |
※症状だけで原因を特定することはできません。強い症状や繰り返す症状がある場合は、運動を中止して医師に相談してください。
マンジャロ使用中の体調が気になる方へ
富士市・富士宮市・沼津市周辺で、マンジャロ使用中の体調変化や運動時の不調にお悩みの方はご相談ください。当院では体重だけでなく、食事量、運動内容、血圧、併用薬などを確認し、必要に応じて血液検査を行います。健診結果やお薬手帳、マンジャロの用量、体重・運動の記録がある場合は診察時にお持ちください。治療の継続、用量、投与間隔は診察で判断し、増量を急がない方針や薬を使わない方針を提案することもあります。
強い症状がある場合は通常の予約を待たず、症状に応じて救急受診するか、処方医へ連絡してください。
まとめ
マンジャロ使用中に力が出にくいときは、食事不足、消化器症状、脱水、低血糖、血圧低下、体重減少の速度などを分けて考えます。lean massの減少と筋力低下は同じ意味ではありません。体重が減っていても、運動や日常生活に支障が出る不調を放置せず、用量を自己判断で変えずに処方医へ相談してください。
よくある質問
【参考文献】
- Look M, et al. Body composition changes during weight reduction with tirzepatide in the SURMOUNT-1 study of adults with obesity or overweight. Diabetes Obes Metab. 2025;27(5):2720-2729. doi:10.1111/dom.16275.
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「マンジャロ皮下注 医薬品情報」
- 日本糖尿病学会「GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する見解」
- Jensen SBK, et al. Physical Fitness with Exercise and GLP-1 Receptor Agonist Treatment Alone or Combined After Diet-Induced Weight Loss: A Secondary Analysis of a Randomized Controlled Trial in Adults with Obesity. Sports Med. 2026. doi:10.1007/s40279-025-02386-0.

