- 体重があまり減っていなくても、運動によって肝臓の脂肪が減ることがあります
- 体重と肝臓の脂肪は、同じ速さで変化するとは限りません
- AST・ALTが下がっただけで、脂肪肝が治ったとは判断できません
- 体重、腹囲、血糖、脂質、肝機能などをあわせて確認する必要があります
- 健診で肝機能を指摘された場合は、結果を持って相談してください
運動を続けているのに体重が減らず、「続ける意味はあるのでしょうか」と相談されることがあります。体重の変化が小さくても、運動によって肝臓にたまった脂肪が減ることはあります。体重は全身の重さ、肝脂肪は肝臓内の脂肪量を示すため、両者の変化は必ずしも一致しません。
ただし、体重が動かなくても常に問題がないとは限りません。また、血液検査でAST・ALTが下がっただけで、脂肪肝が治ったとも判断できません。この記事では、体重と肝脂肪の変化が一致しない理由と、改善を確かめる方法を説明します。
体重が減らなくても、肝脂肪が減ることはあります
体重計の数字がほとんど動かなくても、運動を継続することで肝臓に蓄積した脂肪(肝脂肪)が減ることがあります。体重は全身の変化を映す指標であり、肝脂肪は肝臓という一つの臓器で起きている変化です。両者は関連していますが、同一の指標ではありません。
海外の研究では、有酸素運動を一定期間続けたグループで、体重がほとんど変わらなくても肝臓の脂肪化が改善したことが報告されています。運動によって筋肉でのエネルギー消費が増え、インスリンの効きが良くなることで、肝臓での脂質の合成が抑えられると考えられています。
変化の大きさには個人差があり、全員に同じ結果が起こるわけではありません。また、日本の基準でBMIが25kg/m²以上の肥満を伴うMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)では、減量も治療の柱です。運動で肝脂肪が減ることはあっても、肥満を伴うMASLDで体重管理が不要になるわけではありません。MASLDと、従来使われてきたNAFLDという名称の関係は、脂肪肝はなぜ「MASLD」と呼ばれるようになったのかで説明しています。
体重と肝脂肪が同じように変化しないのはなぜか
体重計が測っているのは肝臓の脂肪だけではない
体重計に表示される数字には、体脂肪、筋肉、骨、水分、腸の内容物など、さまざまな要素が含まれます。肝臓に蓄積した脂肪は、全身の体重の一部にすぎません。肝脂肪が減っても、その変化が体重計の数字に表れないことがあります。肝臓の脂肪量は体重計では測れないため、必要に応じて画像検査などで評価します。
運動では脂肪の蓄積場所や筋肉量も変わる
運動を始めた直後は、体内の水分量や、筋肉に蓄えられたグリコーゲン(糖の貯蔵形態)の量が変動しやすく、これも体重の増減に影響します。数週間単位で見ると、体脂肪が減る一方で筋肉量が維持または増加する場合もあり、体重の変化だけでは体組成の変化を正確に捉えられません。
体重の数字が同じであっても、内臓脂肪や肝脂肪が減少し、インスリンの効きが改善している場合があります。この変化は体重計ではなく、腹囲や血液検査、画像検査を通じて確認するものです。基礎代謝と脂肪肝の関係については、脂肪肝を改善すると基礎代謝は上がるのかで扱っています。
運動は体重計に表れない変化を起こします
有酸素運動で肝脂肪が減った研究
日本肝臓学会が公開している肝臓リハビリテーション指針では、脂肪性肝疾患に対する運動療法として、1回30~60分、週3~4回の有酸素運動を4~12週間継続することで、体重減少を伴わなくても肝臓の脂肪化が改善したとする海外の研究が紹介されています。この条件は研究で用いられた運動量であり、全ての患者に一律に当てはめる処方ではありません。実際に取り組む運動量は、体力や持病の有無に応じて調整する必要があります。
日本人の肥満男性を対象とした後ろ向き研究では、3か月間の運動プログラムを行った群と、食事制限による減量プログラムを行った群が比較されました。体重減少の影響を考慮した解析でも、運動は肝脂肪化や肝硬度の指標の改善と関連していました。ただし、少人数の後ろ向き研究であり、対象が肥満のある男性に限られるため、結果をすべての人にそのまま当てはめることはできません。
2023年に発表された系統的レビューでは、14件のランダム化比較試験、551人のNAFLD患者のデータが解析されました。運動群では対照群と比べ、MRIで測定した肝脂肪量が30%以上相対的に減少する可能性が約3.5倍高く、この関連は臨床的に意味のある体重減少の有無とは独立していました。ただし、これは集団としての傾向です。研究ごとに運動の種類や強度が異なる点にも注意が必要です。
筋トレにも意味はあるが、万能ではない
レジスタンス運動(筋力トレーニング)も、肝脂肪の改善に役立つ可能性があります。心肺機能への負荷を比較的抑えやすいため、有酸素運動が難しい人の選択肢になります。一方、日本肝臓学会の解説では、レジスタンス運動だけを行った場合の肝脂肪減少は大きくないとされています。体力や持病に応じて、有酸素運動と組み合わせる方法も検討します。
年齢や体力、整形外科的な持病、心肺機能によって、適した運動の種類や強度は変わります。運動量を自己判断だけで大きく増やすのではなく、体調に応じて段階的に調整することが現実的です。
なお、ここで示した肝脂肪の減少と、MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)や肝線維化の改善は同じ現象ではありません。脂肪の量が減ることと、炎症や線維化が軽くなることは、評価する対象も検査方法も異なります。生活習慣病治療薬と体重の関係については、生活習慣病の治療薬と体重の関係でも取り上げています。
脂肪肝が改善したかは、何を見れば分かる?
AST・ALT・γ-GTPが下がっても、それだけでは判断できない
AST・ALTは肝細胞障害を疑う手がかり、γ-GTPは胆道系の異常や飲酒、薬剤などの影響を考える手がかりになる血液検査項目です。いずれも肝臓の状態を推測する助けにはなりますが、肝臓に蓄積した脂肪量を直接測る検査ではありません。
数値が基準範囲内でも、画像検査などでMASLDが見つかったり、詳しい評価でMASHや肝線維化が疑われたりすることがあります。MASHは炎症や肝細胞障害を伴う病態であり、進行度は主に線維化の程度などで評価します。逆に数値がやや高くても、原因が脂肪肝とは限りません。飲酒量、常用している薬剤、市販薬やサプリメント、ウイルス性肝炎、胆道の病気など、他の原因が関わっている場合もあります。お酒を飲まない人の脂肪肝については、お酒を飲まないのに脂肪肝と言われた理由で詳しく説明しています。
画像検査と線維化評価は役割が違う
腹部超音波検査では、肝臓に脂肪が沈着している様子を、画像の見え方の変化として確認できます。ごく軽度の脂肪沈着や、炎症・線維化の程度を精密に判定することは、超音波検査だけでは難しい場合があります。
線維化の進行度を推定する指標にFIB-4 indexがあります。年齢とAST、ALT、血小板数から計算する数値で、肝臓に脂肪がどれだけあるかではなく、線維化リスクの高さを推定するためのものです。FIB-4の値が高い場合や、超音波検査で気になる所見がある場合は、エラストグラフィ(肝臓の硬さを測る検査)や、肝臓専門医による評価が必要になることがあります。
体重、BMI、腹囲、血圧、HbA1c、血糖、中性脂肪、肝機能など、複数の指標を組み合わせて確認することで、体重だけでは見えない変化を把握しやすくなります。指標ごとに分かることと分からないことを、以下にまとめました。
| 指標 | 主に分かること | これだけでは分からないこと |
|---|---|---|
| 体重・BMI | 全身の体格や肥満度のおおまかな変化 | 肝臓に脂肪がどれだけ蓄積しているか、筋肉量や水分量の内訳 |
| 腹囲 | 内臓脂肪の蓄積傾向 | 肝臓局所の脂肪量、炎症や線維化の有無 |
| AST・ALT・γ-GTP | 肝細胞障害や胆道系への負荷を疑う手がかり | 肝臓に蓄積した脂肪の量、線維化の進行度合い |
| 腹部超音波検査 | 肝臓への脂肪沈着の有無とおおまかな程度 | 軽度の変化の検出精度、炎症や線維化の詳しい程度 |
| FIB-4 index | 年齢や血液検査値から算出する肝線維化リスクの高低 | 肝臓の脂肪量そのもの、現在の炎症の有無 |
※いずれか一つの指標だけで脂肪肝の状態を判断することはできません。複数の指標をあわせて確認します。
ダイエット外来での血液検査の考え方は、ダイエット外来で血液検査を行う理由でも説明しています。
体重が動かないとき、続けてよい場合と見直す場合
体重以外の指標が改善しているなら、取り組みには意味がある
体重が横ばいでも、腹囲が細くなった、階段や坂道での息切れが減った、血糖値や中性脂肪の値が改善したという場合があります。こうした変化は、取り組みが体に影響を与えているサインとして受け止められます。
体重は日々の食事内容や水分量によって上下するため、毎日の数字の増減に一喜一憂するよりも、数週間から1、2か月単位の傾向を見る方が実態に近づきます。「〇週間で変化がなければ失敗」といった期間を、医学的な診断基準として固定することはできません。人によって反応の速さは異なります。
変化が見られなければ、方法と原因を確認する
体重にも検査値にも変化が見られない場合は、食事の量や内容、清涼飲料や菓子類、飲酒、睡眠、日中の活動量、服用中の薬剤などを見直します。
BMIが23kg/m²未満のやせ型でMASLDを指摘された人では、さらに体重を落とす方向が適切とは限りません。低栄養や、高齢に伴う筋肉量の減少が背景にある場合、減量よりも栄養状態の見直しが優先されることがあります。
体重も検査値も変わらないときは、努力不足と決めつけず、方法が生活に合っているか、脂肪肝以外の原因がないかを見直します。生活習慣病とメタボリックシンドロームの連鎖については、メタボリックドミノとはで紹介しています。
マンジャロやリベルサスを使っていても、体重と肝機能は別々に確認する
体重が減れば肝脂肪も必ず減る、とは限らない
マンジャロ(一般名:チルゼパチド)はGIP/GLP-1受容体作動薬、リベルサス(一般名:セマグルチド)は経口タイプのGLP-1受容体作動薬です。日本国内で承認されている両製品の効能・効果は2型糖尿病であり、減量を目的とした使用は適応外使用にあたり、自由診療での対応となります。マンジャロとリベルサスは、MASLDやMASHの治療薬として承認された製品ではありません。
体重が減少する経過の中で、肝脂肪や血液検査の値が一緒に変化する人はいますが、その変化の大きさや速さには個人差があります。体重の推移だけを見て、肝機能も同じペースで改善していると判断することはできません。薬の作用によって体重が変わる仕組みについては、薬で体重が変わる仕組みで解説しています。使用中は、嘔吐や下痢、食事摂取量の低下、脱水などの体調変化がないかを確認しながら経過を見ます。
肝機能異常があるときは原因の確認が先になることもある
肝機能の数値に異常があるからといって、一律にこれらの薬剤が使用できなくなるわけではありません。異常の原因や程度によっては、体重管理よりも肝疾患そのものの評価を先に行う方が適切な場合があります。肝機能や腎機能に異常がある場合の治療の考え方は、肝機能・腎機能が悪くても医療ダイエットはできるかにまとめています。
なお、2026年6月には、ウゴービ(一般名:セマグルチド)に「肝硬変を伴わないMASH(中等度または高度の線維化を有する場合に限る)」の効能・効果が国内で追加承認されました。対象となる病期が限定された治療であり、マンジャロやリベルサスを減量目的で使用することとは区別して考える必要があります。
健診で肝機能を指摘されたら、結果を持って相談してください
健診で肝機能の異常を指摘された場合は、その結果とともに、過去の血液検査結果やお薬手帳を持って相談にお越しください。数値の推移を比較することで、変化の速さや傾向を把握しやすくなります。飲酒の習慣、サプリメント、市販薬の使用状況も、原因を考えるうえで確認する対象です。
当院では、医師による診察のうえ、必要に応じて血液検査を行い、体調の変化についても確認します。血糖、HbA1c、脂質、肝機能、腎機能などを総合的に見たうえで、体重管理と肝臓の状態のどちらを優先して対応するかを判断します。異常の内容によっては、自由診療によるダイエット外来より先に、保険診療での精査や肝臓専門医への紹介を優先することもあります。
富士市、富士宮市、沼津市周辺にお住まいで健診結果について相談先を探している方は、結果を持参のうえご相談ください。健診で異常を指摘された場合の受診の考え方は、健診で異常を指摘された場合の受診でも説明しています。
まとめ
体重の数字だけを基準に、脂肪肝への取り組みの成果を判断することはできません。運動によって、体重があまり動かないまま肝臓の脂肪が減っている場合もあれば、体重は同じでも生活習慣を見直す余地が残っている場合もあります。血液検査の数値も、正常化した瞬間に脂肪肝が治ったと考えるのではなく、画像検査や他の指標とあわせて経過を追うことが必要です。健診で気になる結果が出た場合は、一人で判断を抱え込まず、これまでの検査結果を持ってご相談ください。
よくある質問(FAQ)
【参考文献】
- 日本消化器病学会・日本肝臓学会編. MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版). 南江堂. 2026.
- 日本肝臓学会 社会保険委員会. 肝臓リハビリテーション指針「3.脂肪性肝疾患患者に対する肝臓リハは?」.
- Oh S, Tsujimoto T, Kim B, et al. Weight-loss-independent benefits of exercise on liver steatosis and stiffness in Japanese men with NAFLD. JHEP Rep. 2021;3:100253.
- Stine JG, DiJoseph K, Pattison Z, et al. Exercise Training Is Associated With Treatment Response in Liver Fat Content by Magnetic Resonance Imaging Independent of Clinically Significant Body Weight Loss in Patients With Nonalcoholic Fatty Liver Disease: A Systematic Review and Meta-Analysis. Am J Gastroenterol. 2023;118(7):1204-1213.
- マンジャロ皮下注 電子添文(日本イーライリリー株式会社).
- リベルサス錠 電子添文(ノボ ノルディスク ファーマ株式会社).


