- ピルの服用後に体重が増えても、薬が原因とは限りません。
- 増えた分が水分か脂肪か、食事や生活の変化が重なっていないかを、記録をもとに確認します。
- 体重が増え続ける、むくみがつらい、飲み続けるのが不安なときは、自己判断でやめずに処方医へ相談してください。
- 薬の変更は、治療の効果や副作用、避妊の必要性を踏まえて判断します。変更すれば痩せるとは限りません。
低用量ピルや月経困難症の治療薬を飲み始めてから、体重が増えた。そう感じたとき、薬のせいではないかと考えるのは自然なことです。当院でもそのように訴えて受診される方がいます。
研究では、配合ピルによる大きな体重増加は示されていません。ただし、服用後に体重が増えた場合は、薬の影響を含めて原因を確認します[6][7]。この記事では、処方医に薬の変更を相談する目安と、治療を続けながら体重を管理する方法を説明します。薬と体重の関係の全体像は、薬と体重の関係、ほかの薬の個別の解説は生活習慣病のお薬と体重・副作用・併用の関連記事一覧をご覧ください。
低用量ピルとLEPの違い
一般に「低用量ピル」と呼ばれる薬には、目的の違う2つのグループがあります。日本産科婦人科学会と日本女性医学学会のガイドラインでは、低用量経口避妊薬(OC)と、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)に分けて扱っています[1]。
どちらも、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲスチン)を組み合わせた飲み薬です。違いは、国内で承認されている目的にあります。
- OC(経口避妊薬):避妊を目的に承認された薬です[2]。避妊目的の処方は保険の対象になりません。
- LEP:月経困難症などの治療薬として承認された薬で、保険診療で処方されます。電子添文には、避妊目的で使用しないことが明記されています[3][4]。
月経困難症の治療でLEPを飲んでいて、避妊も必要な方は、避妊をどうするかを処方医に確認してください。
このほか、黄体ホルモンだけを含む経口避妊薬もあります。国内では2025年から、ドロスピレノン単剤の避妊薬が使われています[5]。この記事で紹介する研究の多くは、エストロゲンと黄体ホルモンの配合薬が対象です。黄体ホルモン単独の薬に、そのまま当てはめることはできません。
まず、お薬手帳や薬袋で薬の商品名を確認し、避妊と治療のどちらの目的で処方されているかを確かめましょう。
お薬手帳を相談に生かす方法は、複数の薬を飲んでいてもダイエット外来を受診できる?お薬手帳と検査が必要な理由でも説明しています。
ピルで太る?研究と副作用の報告
コクランの系統的レビュー(複数の臨床試験をまとめて評価する研究)では、配合ピルなどの体重への影響を調べた49件の試験が検討されています。2013年11月までの文献を検索し、2014年に公表されたものです[6]。
偽薬(有効成分を含まない薬)や無治療と比べた4件の試験では、配合ピルや配合パッチが体重を変化させるという因果関係を裏づける根拠は見つかりませんでした[6]。
レビューの結論は「大きな影響は示されていないが、体重への影響を確定するには根拠が足りない」です[6]。
その後の研究を含めた米国家族計画学会(Society of Family Planning)の2024年の声明でも、配合ホルモン避妊薬が大きな体重増加につながる根拠はないとされています[7]。英国の公的医療サービス(NHS)も同様の説明をしています[8]。
平均やグループ間の差が小さくても、一人ひとりの体重が変わらないとは限りません[7]。実際に増えている場合は、服用開始の時期と体重の推移、同じ時期の生活の変化を照らし合わせます。
電子添文の「体重増加」はどう読むか
国内のLEPの電子添文にも、体重増加やむくみ(浮腫)が副作用として記載されています。例えばヤーズ配合錠では、体重増加と末梢性浮腫が1〜5%未満、体重減少が頻度不明です[3]。ルナベル配合錠LD/ULDでは、浮腫、体重増加、体重減少がいずれも0.1〜5%未満と記載されています[4]。
この数字は、臨床試験などで起き、薬との関係が否定できないと判断された頻度です。薬によって体重が増えた人の割合を示すものではありません。試験の対象者や期間も製剤ごとに違うため、数字を並べて太りやすさを比べることもできません。
「太りにくいピル」は決められるか
エストロゲンの量や黄体ホルモンの種類で、体重への影響を順位づけできる根拠は、現時点では見当たりません。コクランのレビューでも、異なる配合薬の比較の多くで、体重に大きな差は出ていません[6]。
ドロスピレノンには、体に塩分や水分をためるホルモンの働きを抑える「抗ミネラルコルチコイド作用」があります[3]。ただし、この作用だけで脂肪が減る、太りにくいとは判断できません。ドロスピレノンを含むヤーズ配合錠にも、体重増加や浮腫の副作用が記載されています[3]。
増えたのは脂肪?むくみ?
体重計の数字には、脂肪だけでなく、体の水分や、腸の中にある便や食べ物の重さも含まれます。短い期間で大きく上下する変化には、水分や便通の影響が混ざっています。一方、何か月もかけて少しずつ増え、腹囲も増えている場合は、脂肪の増加も考えられます。
服用を始めた時期に、ほかの変化が重なっていないかも確認します。
- 食事の量、間食、飲み物の変化
- 食欲の変化と、それが始まった時期
- 仕事や生活の変化で、体を動かす量が減っていないか
- 睡眠時間や寝る時刻の変化
- 新しく始めたほかの薬
- 禁煙を始めたかどうか(ピルの服用中は禁煙が勧められています[3]。禁煙のあとは体重が増えやすくなります)
食べた量は、実際より少なく見積もられやすいことが知られています。詳しくは「あまり食べていないのに太る」のはなぜ?摂取カロリーと体重維持の関係で解説しています。
家庭の体重計の体脂肪率や腹囲の数字だけで、増えた分が水分か脂肪か、薬が原因かどうかを確定することはできません。家庭での測定は、体重が増えているか減っているか、どのくらいの速さで変わっているかを確認するために使います。
| 体重の変化 | 確認すること | 対応 |
|---|---|---|
| 数日単位で増えたり減ったりする | 塩分の多い食事、便通、月経周期との関係 | 1回の数字で判断せず、同じ条件で測り続ける |
| 顔や脚のむくみが気になる | むくむ時間帯、両脚か片脚か、痛みや息苦しさの有無 | つらいむくみは処方医に相談する。片脚が急に腫れて痛む場合は救急受診 |
| 数か月かけて少しずつ増え、腹囲も増えた | 食事量、間食、活動量、睡眠、禁煙など生活の変化 | 記録をもとに、減量が必要かどうかを相談する |
| 食欲が明らかに増えた | 増えた時期と、服用開始や薬の変更の時期との関係 | 記録を持って処方医に相談する |
一般的な目安です。症状がある場合は、表の内容にかかわらず受診してください。スマートフォンでは横にスクロールできます。
薬の変更を相談する目安
体重について処方医に相談するのに、「何kg増えたら」という決まった基準はありません。増えた量だけでなく、増加の速さ、続いている期間、むくみや体調の変化も合わせて考えます。
相談を考えたい4つの状況
- 体重が増え続けている:数週間から数か月の記録で、体重の増加が続く場合です。
- むくみやほかの症状がつらい:むくみ、乳房の張り、吐き気、頭痛などで、日常生活に支障がある場合です。
- 体重への不安で飲み続けにくい:不安から飲み忘れが増えたり、やめたい気持ちが強くなったりしている場合です。
- 食事や活動だけでは説明しにくい変化がある:生活が変わっていないのに増えている、食欲が明らかに変わった、などの場合です。
原因が分からなくても相談して構いません。体重の変化と、服用を続けるうえで困っていることを処方医に伝えてください。
英国のNHSは、副作用が3か月を過ぎても続いて困る場合に、医師や薬剤師へ相談するよう案内しています。別のピルへの変更や、休薬期間の調整が役立つことがあるとしています[8]。日本で使える薬や飲み方は製剤ごとに決まっているため、具体的な方法は処方医と決めます。3か月は一つの目安で、つらい症状があるときは待つ必要はありません。
相談のときに伝えたいこと
相談の前に2〜4週間ほど記録をつけておくと、処方医が変化の経過をつかみやすくなります。この期間は実践上の目安です。症状がある場合は、記録がそろうのを待たずに相談してください。
- 体重:朝、トイレのあとに同じ体重計で測ります。毎日でなく、週に数回でもかまいません。
- 腹囲:週に1回、へその高さで測ります。
- むくみ:むくむ場所(顔・手・脚)、時間帯、両側か片側か。
- 服用の状況:飲み忘れ、休薬期間、出血の様子。
- 生活の変化:食事、食欲、睡眠、活動量で大きく変わったこと。
- 薬の情報:商品名と処方の目的、服用開始日、変更した日と前の薬の名前、ほかの薬やサプリメント。
変更するかどうかは何で決まるか
薬の変更は、体重だけでは決まりません。処方医は、次のような点をあわせて考えます。
- もともとの治療目的と、今の効果(月経痛がどのくらい軽くなっているかなど)
- 体重以外の副作用(不正出血、頭痛、吐き気など)
- 年齢、喫煙、血圧、片頭痛など、持病や体の状態
- 避妊が必要かどうか
選択肢には、別の配合薬への変更、飲み方の調整、配合薬以外の治療への切り替えなどがあります。どれが合うかは、人によって違います。
薬を変えるときは、むくみや吐き気の改善と、体重そのものの変化を別々に確かめます。薬以外の要因が関わっていれば、変更だけで体重が戻るとは限りません。ルナベルでは、エストロゲン量の少ないULDはLDより不正出血の発現率が高いと記載されています[4]。体重への期待だけで選ばず、治療効果やほかの副作用も確認します。
自己判断で休薬・中止・切り替えをしない理由
体重が気になって薬を急にやめると、次のような問題が起こります。
- 治療していた月経痛などの症状が戻ることがあります。
- OCで避妊している場合は、妊娠を防げなくなります。
- 4週間以上中断したあとに再開した場合や、中断後に別の薬へ切り替えた場合にも、静脈血栓症のリスクが上がるという海外の報告があります。特に再開後3か月間が高いとされています[3][4]。
別の薬に切り替えるときは、新しい薬をいつから飲むか、その間の避妊をどうするかを処方医に確認してください。LEPを使っている間はOCを併用しないことも、電子添文に記載されています[3][4]。
体重の相談を待たずに受診する症状
配合薬では、まれに血栓症(血管の中に血のかたまりができる病気)が起こります。次の症状は、体重の相談とは別に、すぐ対応が必要です。電子添文では、これらの症状があれば直ちに服用を中止し、救急医療機関を受診するよう説明されています[3][4]。
- 脚の急な痛みや腫れ(多くは片方の脚に起こります[9])
- 突然の息切れ、胸の痛み
- 激しい頭痛
- 手足に力が入らない、動かしにくい
- ろれつが回らない、急に見えにくくなる
受診するときは、OCやLEPを飲んでいることを必ず伝えてください。血栓症が疑われる症状がある場合や、脱水など血栓症のリスクが高まる状態では、軽度でも直ちに服用を中止し、医師等に相談するよう電子添文で求められています[3][4]。特に片脚が急に腫れて痛む場合は、記録して様子を見ることはせず、救急医療機関を受診してください。
治療を続けながら体重を管理する
体重管理を始める前に、まず減量が必要かどうかを確認します。体重が標準的な範囲にあり、健診結果にも問題がない方が、数字の変化だけを理由に食事を大きく減らす必要はありません。増えた分が水分による変化であれば、減量の対象にならないこともあります。
減量が必要な場合は、薬の治療を続けたまま、記録で見えた変化に合わせて調整します。
- 食事:間食、甘い飲み物、夜遅い食事など、記録で増えていた部分から1〜2か所だけ変えます。
- 活動:通勤や家事の中で歩く量を増やします。車での移動が多い地域では、意識しないと活動量が減りがちです。
- 睡眠:寝る時刻が遅くなっている場合は、まず就寝時刻をそろえます。
むくみで増えた体重を減らそうとして、水分を控えたり、利尿薬(尿を増やす薬)を自己判断で使ったりしないでください。脱水は血栓症のリスクを高める状態として電子添文に挙げられています[3]。ドロスピレノンを含む薬では、カリウムを保持する利尿薬などとの併用で、血液中のカリウム値が上がることにも注意が必要です[3]。食事を極端に減らすのも避け、むくみの原因を処方医に確認してもらいます。
マンジャロなど減量薬と併用するときの注意
ピルやLEPを使っている方が、減量薬としてマンジャロ(一般名:チルゼパチド)を検討することもあります。マンジャロの国内での承認効能は2型糖尿病です[10]。減量を目的に使う場合は適応外使用となり、自由診療で行われます。体重が増えたことだけを理由に処方する薬ではありません。
併用で注意したいのは、飲み薬の吸収への影響です。マンジャロには、胃の内容物が腸へ送られるのを遅くする作用があります。国内の電子添文では経口避妊薬が併用注意とされ、特に使い始めや増量した直後に、経口避妊薬の効果を弱めるおそれがあると記載されています[10]。
米国の添付文書では、経口避妊薬を使っている人に、開始後4週間と増量後4週間は、飲み薬以外の避妊法に切り替えるか、コンドームなどを追加するよう勧めています[11]。これは米国での推奨です。日本の電子添文には、期間や方法までは書かれていません。
LEPは国内では避妊目的の薬として承認されていません。避妊が必要な場合は、処方医に方法を確認してください[3][4]。併用中の避妊や症状の管理は、LEPとマンジャロ、両方の処方医に確認してください。マンジャロの電子添文では、妊娠の可能性がある方には、使用中と最後の投与後1か月間は避妊が必要だと説明するよう求めています[10]。
マンジャロでは吐き気、嘔吐、下痢が起こりやすく[10]、激しい嘔吐や下痢が続くと、ピルやLEPがきちんと吸収されないことがあります[3][4]。その場合の飲み直しや避妊の追加は、使っている製剤の説明書と処方医の指示に従ってください。マンジャロの効果や副作用は、マンジャロで痩せるのか – 医師が解説する効果と副作用・使える人使えない人で説明しています。
婦人科とダイエット外来への相談
ピルやLEPを続けるか、別の薬に変えるかは、その薬を処方している婦人科などで相談してください。治療の目的、避妊の必要性、血栓症のリスクを含めて判断するのは処方医です。
ダイエット外来では、体重が増えた要因、健康状態、減量が必要かどうか、必要な場合の方法を評価します。婦人科の治療を続けながら、体重のことを別に相談する窓口として使えます。
富士在宅診療所のダイエット外来では、初回は対面で診察し、健診結果または血液検査で体の状態を確認します。減量薬は、BMI20未満の方には処方していません。これは院内で設けている下限で、BMI20以上なら減量薬が適しているという意味ではありません。
富士市・富士宮市・沼津市周辺で、ピルやLEPを続けながら体重のことを相談したい方は、富士在宅診療所のダイエット外来をご覧ください。受診の際は、お薬手帳と、記録した体重やむくみのメモをお持ちください。
よくある質問
【参考文献】
- 日本産科婦人科学会, 日本女性医学学会. OC・LEPガイドライン(低用量経口避妊薬・低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬ガイドライン)2020年度版. 2021年3月発行. Mindsガイドラインライブラリ
- オルガノン株式会社. マーベロン21/マーベロン28 電子添文. 2023年3月改訂(第3版). PMDA 医療用医薬品情報検索
- バイエル薬品株式会社. ヤーズ配合錠 電子添文. 2026年8月改訂(第2版). PMDA 医療用医薬品情報検索
- ノーベルファーマ株式会社. ルナベル配合錠LD/ルナベル配合錠ULD 電子添文. 2023年11月改訂(第4版). PMDA 医療用医薬品情報検索
- あすか製薬株式会社. スリンダ錠28 電子添文. 2025年6月改訂(第2版). PMDA 医療用医薬品情報検索
- Gallo MF, Lopez LM, Grimes DA, Carayon F, Schulz KF, Helmerhorst FM. Combination contraceptives: effects on weight. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2014, Issue 1. Art. No.: CD003987. DOI: 10.1002/14651858.CD003987.pub5. Cochrane
- Zwayne N, Lyman E, Ebersole A, Morse J, et al. Society of Family Planning Committee Statement: Contraception and body weight. Contraception. 2024. DOI: 10.1016/j.contraception.2024.110725. Society of Family Planning
- NHS. Side effects and risks of the combined pill. ページの最終レビュー:2024年2月15日. NHS
- NHS. DVT (deep vein thrombosis). ページの最終レビュー:2026年4月30日. NHS
- 日本イーライリリー株式会社. マンジャロ皮下注アテオス 電子添文. 2026年9月改訂(第11版). 日本イーライリリー 医療関係者向けサイト
- Eli Lilly and Company. MOUNJARO (tirzepatide) injection, for subcutaneous use. Prescribing Information. 2026. U.S. Food and Drug Administration
研究の補足:文献[6]では、体重の変化を理由に中止した割合にも、比較した群の間で差はありませんでした。文献[7]で紹介されているその後の試験の多くは、配合薬どうしの比較です。体重変化に関する研究はBMI30未満の人が中心で、年齢や開始時の体重による違いには未解決の点があります。


